私のロールモデルはシンガーソングライターのあいみょんだ。初めてあいみょんを知ったのは高校生のときで、そのときまで私はオシャレのオの字も知らない(いやまぁちょっとは知ってたかもしれない程度の)女だった。

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オシャレをするにあたって、私が悩んでいたのは美容室での注文だった。自分で行くまでは、母が思う良さげな美容室を母が予約して、母と一緒に連れられて行き、「全体的にスいて肩くらいまで切ってください」と母が言う。私はなすがままされるがまま。

しかし上京して母の元を離れると、美容室を自分で予約して髪型も自分で決められる。というか、決めなければならない。自分にどんな髪が似合うかなんて知らねぇ私は、とりあえず星4以上の美容室を予約して、かわいいと思うあいみょんの画像をダウンロードして、美容師さんに見せた。

「こんな感じにしてください」
「長さが足りません」

ガビーん(死語?)。ええ、このあいみょんになるつもりで来たんだけど…。
焦りながらその場で他のあいみょんの画像を探す。しかし、マリーゴールド期前後のあいみょんは胸くらいまでかかる髪の長さをしていて、私はというと、肩くらいまでの長さだった。

早過ぎたんだ…、と私の中のクロトワが呟く。上京する前に美容室に行っていたから、上京してから予約するのが早過ぎたんだ。
焦った私を見かねてか、美容師さんが「レイヤーだけでも作ります?」と言ってくれた。
「レイヤー?」
「顔の周りに段を作るんです。あいみょんの横髪みたいに」
よくわからなかったが、それでいいと頷いた。

出来上がった自分は、なんというか、かわいかった。レイヤーを入れるだけでこんなに雰囲気オシャレになるのかと感動した。

それ以降も美容室は決まってあいみょんの髪型を元に選んでいて、今年の5月には初めてパーマをかけた。果たして自分にパーマが似合うのかは不安であったが、手前味噌ながらパーマもよく似合っていた。くるんくるんになった髪に比例するように心も跳ねた。

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しかし、私の高校時代までの髪型の指揮を執っていた母からは「前髪を上げろ」とのお達しがあった。前髪を上げてデコを見せろと。

私は断固拒否した。それだけは嫌である。なぜなら私はデコが広い。母も異様に広い。遺伝だ。ところが母は、広いデコをあえて出すことでコンプレックスであることを相殺しているんだと言う。

私には無理だった。ポンパドールはモテないと聞くし、コンプレックスを全面に出せるほど私は成熟していないし、前髪があるほうがかわいい。絶対に。

そう否定し続けていたのに先日、あいみょんがポンパドールをしていた。デコを大いにさらけ出していた。広かった、あいみょんのおデコも。私と同じくらい。

「え、かわいい」

あんだけポンパドールのかわいさを力説してきた母より、あいみょんのおデコ写真。推しって偉大。

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以降、私も積極的にポンパドールにし、広いデコをさらけ出すようにしている。コンプレックスだと思っていたことも、推しと同じだとむしろラッキーチャームポイントにすらなる。
オシャレになりたければ、オシャレだと思う人を真似してみると話が早い。自分の気に入らなかった部分もふとしたきっかけで克服できたりするから。