「ゾウアザラシみたいだね」好意を寄せていた先生の一言がグサリと刺さった

中学3年生だった、ある日のこと。
好意を寄せていた学校の先生が私の姿を見て言い放った「ゾウアザラシみたいだね」という一言が、私の心にグサリと刺さった。
太りやすい体質は自覚していたが、その瞬間から鏡の前で自分の体をじっと見つめては落ち込む日々が始まった。
夜な夜な「どうすれば少しでも痩せられるか」と検索しては、試行錯誤を繰り返す毎日。
何人ものクラスメイトや一部の後輩が「今の体型のままで十分素敵だよ」と声をかけてくれた。
しかし、私はそんな多数の声をバッサリと否定し、たった一つの「ゾウアザラシみたいだね」の声にしばらく囚われ続けることになってしまった。
中学生だった私は自身の体型に真剣に悩み、必死に変わろうとしていた。
高校に入学してから数か月、高校デビューに失敗し友達ができなかった私は「せめて痩せて綺麗になってやろう」という思いで、自分の体を変える決意をした。
運動したり間食をすべて我慢し、少しでも見た目を整えようと努力した。
夕食は大豆バー一本に置き換え、カロリーの摂取量を抑えた。毎日夜1時間近所周りでランニングをし続けた。日々の食事の摂取量が急激に変わったため、毎日お腹を鳴らしていた。教室で盛大にお腹が鳴り、恥ずかしくて、教室から逃げ出したくなる時もあった。それでも友達ができなくて悔しかった私は、綺麗なスタイルになってクラスメイトを見返してやろうという意地だけで空腹を耐え抜き続けた。
小さな成功を積み重ねることで、「変わりたい」という思いは少しずつ力に変わっていった。
結果、私は3ヶ月で8kgの減量に成功した。
鏡の前で細くなった自分を見つめるのが嬉しかった。
痩せても高校2年に進級するまでの間は結局友人ができず孤立して終わったが、制服のスカートを以前よりもきつめに調節するようになった自分に対し、「やってやったぞ」と誇らしさと強烈な達成感を感じた。
数年が経ち大人になった今、あの頃の自分を振り返ると、若さと悔しさの原動力ってすごいパワーなんだなぁ、と思い知らされる。昔の私、すごいなぁと嬉しく思う。
もう一度やってみろと言われても、おそらく今の私には無理だ。当時の先生の発言に怒りが湧いてきてしまうし、今そんなこと言われたら、先生に対し確実にグーパンをかますだろう。
しかし、当時のダイエットの仕方は食事の量を抑えることに重きを置いていたので、不健康的な方法だったな、と反省もある。
あの時のことを母に聞くと、「急激に痩せたから心配していた」と言われてしまったほどだ。元々運動習慣がなかったことも相まって、運動重視で痩せる方法から逃げてしまったのだろう。小さい頃から「私の子だから運動神経はない」と親に言われ、最初から諦めていた自分がいた。運動の習慣が身についていれば、もっと自由に体を動かして、健康的に痩せることができたかもしれない。
でも同時に、当時の努力や悩みがあったからこそ、今の自分の体力や健康に向き合う姿勢があることも確かだ。
今の私は、子供の頃に運動習慣が身につけられなかった反省をきっかけに、少しずつ体力と習慣をつける努力を続けている。毎日30分、首や肩まわり、腹筋やスクワットの運動を行い、無理のないペースで体を鍛える努力をしている。すぐ疲れてしまう自分の体も、少しずつ変化を感じられる。
そして、太りやすい体質や運動に悩んできた経験のおかげで、同じく運動が苦手な人の気持ちを理解したり、自分の強みに気づけたりすることもあるのだろうと思う。
体力や運動はまだまだ弱点だが、コツコツ続ければ日々の生活への息苦しさも軽減されるだろう。辛い運動のその先にある、筋肉をしなやかに動かし、日々をのびやかに暮らす生活が楽しみだ。
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