今年の夏もすごく暑く、ものすごくアイスクリームを食べた。もれなく脂肪もついた。

私は昔から太っているのがコンプレックス。じゃあ痩せればいいじゃない、と言われそうだけれど、そんなに簡単な話ではないのだ。なにせこの世に誕生したとき、4040グラムで生まれてきた。ベビールームでも他の赤ちゃんより一回り以上でかくて、父曰く、見つけやすかったらしい。そんな生まれ持っての脂肪を蓄え、ここまで来た私が痩せようとするのだから、やはり簡単なことではない。

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よく冬になると「脂肪がある人はあったかくていいよね」と言われるのだけれど、全然寒い。冬の私を守ってくれるのは脂肪ではなく、コートである。薄手の。

ところが最近、この脂肪が私を守ってくれていることに気づいてしまった。それは肌なのだ。エステにも行かない、ボディケアもしない、冬もクリームさえ塗らない私なのに、近所のおばさんから、会社の同僚から、通りすがりの老人まで、なぜか肌を褒めてくれる。「あらー、白くてモチモチした肌ねぇー」と、亡き祖母が私の二の腕の肉を尋常ではない力で引っ張りながら、褒めてくれたのを思い出す。

そう気づいた瞬間、モーゼが海を二つに割ったように道が見えた。脂肪は敵ではない。味方なのである。そんな言葉が、道の先にあった。

考えてみれば当然のことだった。脂肪があるということは、肌の下にクッションがあるということだ。シワができにくい、たるみはするが、ハリもまだ若干ある。
高級な美容液を塗らなくても、内側から支えてくれる脂肪がある。これはもう天然の保湿クリームではないか。

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思えば私は長い間、「太ってるから」という言葉を盾にしてきた。
走るのが遅いのも、階段がきついのも、お洒落ができないのも、全部「太ってるから」で説明がついた。便利な言い訳だったのだ。でも同時に、それは自分の可能性を閉じ込める檻でもあった。「太ってるから無理」と言えば、挑戦しなくていい理由になってしまう。

でも今は違う。太ってるおかげで肌がいい。これは武器だ。

同じ脂肪なのに、捉えかた次第でこんなにも見方が変わるのである。不思議なものだ。
写真を撮るのは相変わらず好きじゃないが、撮った写真を見て「まあ、肌は綺麗だな」と思えるようになった。

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毎日、脂肪を「今日は太ももの脂肪を胸に」とか「二の腕の脂肪を、頬に」と自由自在に操れないのか?思う日はあるけど、それはできない。

4040グラムで生まれてきた私の脂肪は、これからも私と共にある。でもそれでいいのだ。脂肪が私の肌を守り、私の肌が私を守る。悪くない関係である。
来年も脂肪に投資するために、アイスクリームを食べるだろう。