太りやすく痩せにくい体質は、私の運動習慣の源となった

「ねえ、体重何キロ」
「デブだよね」
22歳まで少なくとも1000回は言われてきた言葉だ。158センチの身長に対して70キロあった私を示すには相応しく、赤いポストのマークを観れば郵便局であることが分かるように、それは私を象徴するものであった。
私自身も、「さすがに160センチ未満で70キロと表示されるのは嫌だな」と思いながら身体計測の直前にダイエットを行い、一時的に60キロ後半にして終わったらまた70キロに戻るという怠惰な生活を送っていた。もちろん運動は大の苦手で、学校で受けさせられたスポーツテストは7回連続でD判定だった。
しかし、その感情は時々襲ってきた。
どうして私だけふくよかな体型なんだろう。
食べることは確かに楽しい。止められない。でも、それを楽しむことに比例して太りやすい体質なのは受け入れ難い。朝起きたらみんなみたいに普通体型になっていればいいのに。なんの努力もせず、そんな無茶な欲望を抱いていた。
ようやく現実を受け入れるようになったのは、大学院生になってからのことだった。洋服のサイズというのは本当によくできていて、標準サイズである9号は見事にBMI25を超えると着るのが難しくなってしまう。きれいめフェミニンの王道ブランドであるレッセパッセに飛び付くも、着ることができなかった。また、大学院生になると人前に立つ機会も増え、そんな時に抱かれる第一人称が「太っている」となってしまうのは恥ずかしい。そんな複数の要素が重なり、22年間断固としてダイエットをしなかった私も遂に重い腰を上げることとなった。
実際のダイエット生活は想像以上に辛いものだった。普通体型の学生がラーメンやカレーをペロリと平らげる真横で一人野菜でお腹を膨らませ、炭水化物やおかずは油が使われないもので補った。夜中に菓子パンを食べる女性を見ては「なんで太らないんだよー」と、嫉妬心を抱いていた。
そんな生活を始めて9ヶ月ほどが経ち、普通体型になることができた。それ以降体型を揶揄されることはなくなり、念願のレッセパッセのみならず洋服のサイズで困ることはなくなった。痩せすぎは良くないという医学の常識が入り始めていたことから、暫く現状維持を続けた。
二度目の転機が訪れたのは2022年のことだった。偶然隠れ肥満が発覚し、慌てて近場のホットヨガ教室に入会した。入会してから1年目は筋肉が増え、体脂肪率を7%減らすことができたが、2年目以降は停滞だった。後に分かったのは、ヨガは姿勢の矯正や発汗効果など美容効果のある運動で、筋肉を増やすことには向いていないらしい。同時に筋肉が付きにくい体質であることも発覚した。18時45分以降は絶食し、私より後に入会した人が先に上達するケースを横目にサボらず定期的に通ったことから、ショックは大きかった。
そして現在、三度目の転機を迎えている。3年間通い続けたホットヨガ教室を休会し、週に4回スポーツジムで筋肉トレーニングを行っている。ジムに行く時の夕飯はプロテインのみで済ませ、後は毎回2時間以上ひたすら筋トレと合同レッスンに参加している。過酷だが今のところ止めるつもりはなく、今度こそ結果を出そうという強い気持ちを持って取り組んでいる。
医師や専門家の話によると、私は中性脂肪が少ない分血管年齢は若いが、皮下脂肪がたまりやすい体質らしい。加えて筋肉も付きにくい。しかし、これらのハンディは、それまでなかった運動習慣の源となっている。
週に4度の運動習慣を身に付けて4年目になるが、私は平均より骨格筋量が少ない。それでも私は諦めない。太りやすく痩せにくいというハンディが与えてくれた運動習慣を簡単に手放すことができない。目標は、血管年齢のみならず骨格筋年齢も平均より若くすること。筋力を付け、体脂肪率を減らすこと。
コンプレックスをアドバンテージに、私は今日も退勤後に2時間以上の運動をする。
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