「女の言うことを聞くな」と言う彼の父親。自分の想いを届けたい
忘れもしない、高校の卒業式の後。
打ち上げを終え、男友達2人と駅に向かって歩いていると、おじさんに声をかけられた。
「地図を持っているが、道が分からない」という内容だった。
「あ、そこに行きたいなら…」と私が説明しようとすると「女のくせに黙ってろ!」
と、怒鳴られた。
突然のことだったので、固まってしまった。結局男友達が説明をして、おじさんは快く去って行ったが、私はこの出来事を今でもたまに思い出し、モヤモヤしている。もう10年以上も前の事なのに。
性差別。この卒業式の日まで私は感じたことがなかった。
このおじさんに怒鳴られた話を母にしたとき、母が中学生だった頃、「学級委員長をやりたい」と言ったら、担任の先生に「女がでしゃばるな!」と叱られたと聞いた。昭和時代よりはもちろん、性差別はなくなってきていると思う。「女のくせに」と言われたのは、後にも先にもこの日だけだ。
しかし、最近また性差別関連でモヤモヤする出来事があった。私は今、彼氏と同棲している。結婚の話もぼちぼち出始めている。私は一人っ子で、いとこもいないので、可能なら彼氏に私の名字にしてほしい。
それを彼氏から向こうの両親に伝えてもらった。すると彼の父親が「女の言うことを聞くな。女の名字になるなんて駄目だ」と怒ったそうだ。
「彼が大好きだから、結婚できればいい。難しければ彼氏の名字で良い」と思っていたが、彼の父親の言うことを聞いて彼氏の名字になるのは嫌だと心から思った。一人っ子で、いとこもいない苦労をせめて分かって欲しい。直接会ったとき、怒鳴られるかもしれない。それでも私は、男も女も関係ないことを伝えていきたいのだ。
そう思えるのは、きっと、かがみよかがみで想いを発信し続けてきたから。
投稿のきっかけは27歳の時、失恋したことだった。落ち込みながら、インターネットサーフィンをしていたら、たまたま峯岸みなみさんのツイートから「かがみよかがみ」というサイトがあることを知った。失恋して悲しい気持ちを書きたい。とりあえずパソコンに向かって、文章を書いてみよう。あ、でも悲しいままで文章を終えたら採用されないかも。最後の一文は、前向きなことを書こう。
こうして、エッセイを書いてみると、書き終えた頃に少し気持ちが軽くなっていた。この経験が好きで、失恋のエッセイをきっかけにいくつものエッセイを書いた。コメント機能があったときは、生理について書いたエッセイに「共感しました」というコメントが5件くらいつき、すごく嬉しかった。悩んでいたのは、自分だけじゃないんだと思えた。かがみよかがみの投稿をきっかけに、Twitter(現X)を開設し、他のかがみすとさんとも交流できた。
みんな、様々なことを感じながら、葛藤し、生きている。それをかがみよかがみで知れて、本当に良かった。
初めてのエッセイは1人暮らしの家で、失恋したことを書いた。
かがみよかがみに載る最後のエッセイは、大好きな彼氏と2人暮らしをする家で書いている。投稿してきた約54年間でいろいろなことがあり、環境も変わった。でも、私の性格も考え方も、私のままである。
今後もきっといろいろなことがあって、直近では彼の父親との話し合いが待っている。後悔のないよう、自分の気持ちを伝えたい。言葉にしなければ伝わらないこともけど、言葉にすることで、彼の父親にも伝わる可能性もある。
かがみよかがみの投稿経験で得た「自信」と「私は変わらない。社会を変える」のフレーズを胸に、これからも自分の想いを伝え続けたい。

かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。