容姿で悩んでいた20代の私へ届けたいエッセイ【編集部・伊藤】
「かがみよかがみ」がスタートして早4カ月。2019年もたくさんのエッセイを読ませていただきました。1年を振り返って、編集部員の「推しエッセイ」を紹介します。
「かがみよかがみ」がスタートして早4カ月。2019年もたくさんのエッセイを読ませていただきました。1年を振り返って、編集部員の「推しエッセイ」を紹介します。
私(33)の20代を振り返ると、悩みの99%が容姿によるものでした。というのも、私の不幸の原因は全部自分がブスだからだと思っていたからです。成績が悪いのも先生がかわいい子をひいきするからで、彼氏が浮気するのも私がブスだからだし……的な。やばいっすね。というわけで、今回は20代の自分にぜひ読ませたいエッセイ、という視点で選ばせていただきました。
◆顔面偏差値を知りたくて始めたビールの売り子。1シーズンで辞めた理由/みのり
◆「美容整形」をする理由は、自分を愛したかったから/釜
◆「いいじゃんしたいんだし」でいいじゃん!だって私たちは美人だから/美人
私がビールの売り子を始めたのは「自分がかわいいことを客観的に証明したかったから」というごくごく単純かつ不純な理由からだった。
顔面偏差値を知りたくて始めたビールの売り子。1シーズンで辞めた理由
わかる。実は私も「自分はブスなんじゃないか」と思いながらも、「かわいい」とも言われたくて、かわいい子しかできなさそうなバイトをしてみたことがありました。ミニスカートをはいて、携帯(当時はね…)を売るバイト。なんかこれはもう、顔やスタイルに自信がないとこんなかっこできないだろ、みたいなことをしていました。
すると、不思議なほど「かわいいかわいい」と言ってもらえるんですよ。でも、なんとなく、その言葉が気持ち悪かったんだよな。ぞわぞわ。あれってなんだったんだろう…。その理由が、このエッセイを読んでわかりました。
多分消費されて得る自信なんてそんなに大したことはないんだ。他人に委ねられてる自信なんて相対的なものでしかないから、形はあっという間に変わってしまう。女の子が消費されることをすぐになくすことは難しいかもしれない。でもそのことに甘んじずに生きていこう。 女の子は消費なんかされなくたってかっこいいしかわいいし美しいのだから。
顔面偏差値を知りたくて始めたビールの売り子。1シーズンで辞めた理由
あ、私が嫌だったあの感じは「消費されている」ってことだったんだな。「若い」「女」という入れ物だけしか見られていない、あの感じ。自分が見て欲しいところを見てもらえないあの感じ。今思い出しても気持ち悪い。
それから、私がブスで悩んでいた10年前との大きな差は「美容整形」に関する考え方なのかなと思いました。私が20代の頃、「美容整形」というのは一生メンテナンスし続ける金持ちしかできない禁じ手…というイメージでした。でも、今はもっと安価になり、ひとつの選択肢として、普及しているんだなというのに驚きました。
ですが、ですが。やっぱり美容整形って「そんな簡単なものじゃないよな」という切実なエッセイも届きました。
手術当日、はじめは笑気麻酔という吸引系の軽い麻酔から、点滴の静脈麻酔、そして意識はすぐになくなった。ひどい眠気と「終わりましたよ」という看護師さんの声で起きた。酷く腫れた目をみて、ああ、ようやく終わったんだと解放された気持ちになった。だるい身体を何とかひきずって、燃えるような鈍痛に耐えた。直接目が痛いのではなく、ひっきりなしに頭の方が潰されるような痛みだった。吐き気も酷かった。 「こんなに辛い思いをして綺麗にならなければ生きていけないのか」
「美容整形」をする理由は、自分を愛したかったから
これだけつらい思いをしたからこそ、たどりついた結論に思わずはっとさせられました。
どんな苦痛でも耐えて、私は見た目を美しくしたいと思う。
「美容整形」をする理由は、自分を愛したかったから
けれど、それは世の中が美しくない私を疎外しているからではないし、これは私の価値観のひとつに過ぎない。誰にも真の美しさは定義できないのだ。そして、何者かに虐げられたからではなくて、虐げているのは実は自分だということに気付いている。そして自分を愛せないのは容姿だけが問題ではないと言うことも。
容姿は自分を愛せない要因の一つでしかない。本当にその通り。以前の私のような「全てうまくいかないのはブスだからだ!」は思考停止でしかない。自分が自分を愛せない理由を因数分解することが必要だったんだなと思いました(それはそれでしんどいが!)。
そして、忘れちゃいけない…!ペンネーム「美人」。なんかもう、ペンネームからずるいっしょ(笑)。
20歳の頃、自己卑下妖怪「ブス洗い」(どす黒いコンプレックスをザルにいれて川で永遠に研いでいる妖怪)から、ライター「美人」になりました。 ブログ「美人ブログ」を立ち上げ、ある日突然勝手に「美人」になりました。
「いいじゃんしたいんだし」でいいじゃん!だって私たちは美人だから
ストロング!!!
そうなんですよね。美人って「ある日突然勝手に」なれるものなんですよね。
すると、どうなるか。
大決壊です。23年間心にとどめてきた、美人ダムが放水です! 雨水がダムを超え、川を下り、水道管を経て、たくさんの蛇口から吹き出すように、私の文章が、企画が、ユーモアが、誰かの元へ届き始めました。
「いいじゃんしたいんだし」でいいじゃん!だって私たちは美人だから
「ブスだから」「私なんか」とフタをしていた過去の私にその後の美人さんの大活躍を見せてあげたい。まさに、我慢していた思いの決壊後にあふれた、文章・企画・ユーモアで誰かの共感を得て、誰かを救っているのです。すごい…。
18~29歳の女性のエッセイを募集しているのですが、30代以上の方からも共感の声をいただいております。私のように「かつての私に読ませてあげたいよ…」、または「同じ問題を抱えていた私からのアドバイスを伝えたい」という声などなど。ありがとうございます。多くの方に自分事として読んでいただけたからなのかなと思います。上からでもなく、押しつけがましくもなく、主語「私」の等身大の「自分語り」だからこその言葉の力を感じています。
2020年も、引き続きあなたのエッセイをお待ちしております。
かがみよかがみは「私は変わらない、社会を変える」をコンセプトにしたエッセイ投稿メディアです。
「私」が持つ違和感を持ち寄り、社会を変えるムーブメントをつくっていくことが目標です。
恋愛やキャリアなど個人的な経験と、Metooやジェンダーなどの社会的関心が混ざり合ったエッセイやコラム、インタビューを配信しています。