かわいい
男の人にいわれてみんなどんなふうに思う?
私は男性からの「可愛い」という言葉でしか自分の価値が評価されてないと思う時期があったよ。
女子校生活の沼に6年間どっぷり浸かっていた私は大学入学時、大きな壁にぶつかった。
なかなか彼氏が出来ないこと、男の人には確立された理想の可愛い女性像があることが多いということ、それに自分は当てはまらないということ。男の人達が「あいつはブス」とか話しているのが信じられなかった。それが自分に向けられるなんてことも。
私のアイデンティティが女性としての魅力度に直結しない現実に絶望した
「だってお前ブスじゃん、aikoは歌っちゃダメだよ。可愛い子が歌うから、aikoは良いんだよ」
大学1年の頃、笑いながら言われた。
割と仲の良い1つ上の男の先輩だった。
私って、可愛くないんだ。
誰が見ても私はブスなんだ。
ブスなボーカルは歌う内容も制限されるんだ。
ブスだから彼氏もできないんだ。
私は前に出ることも苦痛ではなかったことから「しっかり者キャラ」「おもしろキャラ」として中高では割と活躍してた。そんな私のアイデンティティが女性としての魅力度に直結しない現実に、ただただ絶望した。先輩は傷ついてる私をみて「本当にブスだったら言わないから笑」と最低のフォロー。その後も何度かその先輩からはブスいじりをされた。
それ以外にも、「なんか面白いこと言ってみろよ」とそそのかされた後輩にいきなり指されて「ブス!!」と言われ、他の後輩にも「ブス」と言われた。その時も、男達はすぐさま「本当に思ってたら言わないよ」と呼吸するかのごとく私に囁いてきた。
男性に言われる「可愛い」が私の評価の絶対なんだ
私は、いつしか外見のみで評価されることに慣れ切ってしまい、男達と一緒に「あの子可愛いよね」と評価”する”側に身を置くようになった。分相応にわきまえていることをアピールして、自分の身を守るしかなかった。そうやって標的にされることから逃げようと言葉をつむぐたびに私が絶対に”選ばれない”側であることを痛感し心がどんどんすさんだ。
そのうち私は、女子校の頃の友人達の「〇〇は良い所いっぱいあるし、可愛い」という言葉を疑うようになった。そう言って今彼氏出来てないんだから、その「可愛い」はほんとの「可愛い」じゃないんだ。男性に言われる「可愛い」が私の評価の絶対なんだと。
高校の頃、バンド活動をしていた際に出会った他校の男子が、可愛いとか言ってくれた(友達から聞いたけど覚えてない)のにも全く相手にしてなかったわたしが!
「可愛い」の呪いにかかってしまったのだ。
私が飢えていた可愛いは、ただのうわずみ液でしかなかった
でもどうだろう。
私が必死で求めた男性たちの「可愛い」にはどれほどの価値があるのか。
頑張って恋活した際に出会った男性たちは初対面ながらも口々に「可愛いじゃん」「彼氏いなかったのは運だよ」と言ってくれた。初めは嬉しかった。でもそれを言ってくれたって本当に辛い時に誰にも助けを求められなかった。相談をしたくたって、お互い顔と簡単なプロフィールしか知らないから何かを打ち明ける気にもなれない。
そんな言葉を軽々しく言う人達はそろって体の関係しか求めなかった。ってことは社交辞令程度の挨拶だったってわけ。それすらもわからなくなるくらい私は麻痺していた。
私が飢えていた可愛いは、ただのうわずみ液でしかなかった。
初対面の男性が言う「可愛いから、絶対彼氏できるよ」はサークルの男たちの「本当にブスだったら言わないから」と同じくらい薄っぺらい言葉なんじゃないのか。
顔がかわいければ彼氏ができる
彼氏がいないこと=不思議なこと
男に選ばれる・選ばれないという世界線しかない
という地獄のような刷り込みと、可愛いに絶対の基準があるのだと信じ込んで、自分の弱さから目を背けていた私が、そこにはいたんだ。
「可愛い」はどこまでも主観的なはず
もちろん外見の良さを褒めることは悪くない。私も可愛いと思ったら伝えたい。けど、一つの言葉を画一的にとらえるのは地獄でしかない。「可愛い」はどこまでも主観的なはずなのに。
誰にどんな言葉で、言われたら喜べるか。
どんな枕詞がついて、「かわいい」と言われるか。そのバックボーンは全然違くて、背景が違えば言葉のいろどりも変わるのだから。