「次、会うときは」

あなたの二の腕に触れたい。

学生時代に比べると太りやすくなったね、たぶんわたしはお菓子の食べすぎで、あなたはお酒の飲みすぎで。少しは運動しないと。

そういえばあなたの体操着、みんなのと少し違ったね。転校生だったんだっけ?すっかり忘れてしまってた。そうだ、二年にあがるとき、きつくなっちゃって買いなおしていたもんね。あのウソみたいにダサいジャージの色を覚えてる?校庭の階段の手すりを滑り降りて、わたしのは膝のところが破けてしまってた。

あの頃いつも、何も考えずあなたの腕をとって、わたしたち、仲の良い姉妹みたいに廊下を一緒に歩いたね。わたしより色白なあなたの頬や、やわらかな二の腕がすきだった。

以前はきっとシンプルに伝えられたこと、でも今じゃそうもいかないね

あなたと最後に会った日は、まだ、結構肌寒くって、わたしたちお互いの仕事終わりに、電話をかけあって待ち合わせして、駅前のてきとうな居酒屋で、「えっ煮込みあるよ、あ、おでんもある!」なんてはしゃいだね。両方頼んでふたりでつついた。おでんに入っていたトマトを、あなたがとても警戒していたのが可笑しくって。

ねえ、あれからきっと、髪が随分伸びたんじゃない?わたしは今朝、とうとう自分で切っちゃった。我慢できなくて。
そうそう、あの日、お酒を飲みながら、ダイエットとか美容の話になって一緒に真剣にダイエットしようよって約束して、ふたりの住所の中間地点で、安くて、きれいで、プールのあるジムを探したね。ここがいいかなって選んだところに、まだ、電話すらしていない。

それに、あなたが、さっそくポチった!とうれしそうにしていた新しい水着もまだ見れていなくって……。時々、さみしくてスマートフォンに手を伸ばすけど、いざ電話をかけようとしても何を言ったらいいのか、なんだかよくわからなくなっちゃって。

「元気でいる?」
「まわりのひとは?」
「ご飯どうしてる?」
「春、なんか服買った?」
「早く会いたいね」

ぜんぶぜんぶ本当に話したいことなんだけれど、どこか歯がゆくて不思議なの。言いたいことはこれなんだけど、これだけじゃない。以前、わたしたちがいた単純な世界なら、きっと、待ち合わせた駅の改札で手を取りあって目を合わせるだけで、それだけでいいようなコミュニケーション。

そうだ、手紙を書いてみようか、なんて思ってみたりする

何度か、不器用に文章を作っては削除して、結局、メッセージも電話も諦めて、スマートフォンを放り投げ、そうだ、手紙を書いてみようか、なんて思ってみたりする。そして、思えば中学生の頃には年賀状を送り合っていたんだっけ、と可笑しくなる。どこかに、使っていないポストカードがあったっけ?そもそもあなたの今住んでいる住所も知らない。
わたしはソファに寝っ転がって、目を閉じてあなたへの文面を考える。

元気?あなたにこんなの書くの、おそろしく久しぶりだけど、たまには手紙も楽しいね。授業中に回し読みしていた、あの、くだらない手紙みたいだね――。

この不安な日々がまだまだ続くなら、わたしはいつか、本当にあなたに手紙を出すだろうか?未来のことはわからない。そして、それをわたしたちはいま、毎日思い知っている。

これからわたしたちはどうなっていくんだろう?

目まぐるしく変わる状況と、急に真っ白になった未来と、溢れては消える情報の渦。不安になって、考え込む日も少なくないけれど、次にあなたと、やっと会えたら、とりあえずその白い二の腕を優しく掴んで「やっぱり太った?」と意地悪を言わせて。そして、かなうなら約束どおり、一緒に待ち合わせて泳ぎに行こうよ。