18歳高校三年生。大学受験に全落ちした。
大学ストレート合格じゃなくなる。
それが初めて私が「社会の当たり前」から逸脱した瞬間だった。
やばいじゃんと思ったけど、反面、安心した。だってとてもじゃないけど普通に大学に行って勉強できるようなメンタリティじゃなかったし。周りにせかされながらギリギリの状態を保って期待に応え続けるのはしんどかったし、疲れ切ってたから。
両親たっての希望で、小学校一年生の時から塾に入れられた。友達と遊ぶのは後回しで、毎日机に縛り付けられて、勉強は嫌いじゃなかったけれど自分でやるのと強制されるのとは違う。
少しでも勉強をしないと、母は気分を害して家にあった私のぬいぐるみとか本とかおもちゃを全部ゴミ袋に詰めた。ゴミ回収車に出す用の、レジ袋じゃない正式なゴミ袋だ。
結局彼女が実際に捨てたことはなかった。しばらくして彼女の気が済んだら戻ってくる。でも「いつでも捨てられる」という恐怖は、私の胸の奥を氷みたいに冷たくした。
塾だけじゃない。「教養だから」と通わされていた好きでもなかったピアノ教室は、毎日十回課題曲を練習するという親が独自に課したノルマがあって、それをしないと、出来ないとこっぴどく叱られた。裸足で閉め出される。大声で怒鳴られる。
父はといえば、そこに居るのに素知らぬ顔で飯を食ってたりする。自らの手を汚しはしないものの、事実上の加担をしている。だから私は、一人で荒れ狂う母と対峙しなければならなかった。
私にとって母は制御不能で理解不能の、天変地異みたいな存在だった。
意思とは関係のない道を強制されても逃げられない力関係
そんなのとわかり合うのは無理だと思うし、怒鳴られるのも服や腕を引っ張られて蹴る殴るの暴行を受けるのも避けたい。
子どもは失敗する生き物だと思う。だってまだ地球数年目なんだもの、そりゃ加減わからなくて机のコップ倒したりなにか割っちゃったりするでしょ。当たり前だよ。
でもそれを、ごうごうと怒り狂って我が子にぶつけるから、ばれないようにひたすら隠そうとした。でもバレて、「小賢しい」と叱られる。
「そういうところがむかつくんだよ」だって、怖いものからは逃げたいのって当たり前じゃないか。
誰だって痛いことされたくないよ。
と、至極当たり前のことをわかって欲しかったのに、叱られてご飯抜きにされたある晩のこと。父が私に「ママだって頑張ってるんだよ」と見当外れのフォローをしてきた。
地球人数年目だけど、この家救いがないなと思ってしまった。
結果、脅されて、やらされて、気力がなくても有名私立中学に受かってしまった。そこからは高校卒業までが保証される、エスカレーター式で昇っていく。本人の意思とは関係なしに。自分の意思で入った環境ではなかった。でも地元の学校は治安が悪いと繰り返し両親に脅されていて(実際はそんなことなかった。でも刷り込まれていた)、あとそれまで自分で進路を選べたことがなくて、急に選ぶのは不安で、エスカレーターを降りられなかった。
初めて自分で選んだ「浪人」という進路
エスカレーターが終着点に着いて、縛る力も弱くなったから、浪人した。
「娘が浪人しただなんて言えない。俺が恥かくじゃないか」とか散々言われたけれど、両親の望む「普通」や「理想」から一歩外れて、安心した。正直現役で大学に行く心づもりもなかった(でも両親の希望や周囲をまねて受験はした)から、実質自分で進路を選んだことになる。
通う予備校も自分で選んだし、受験する大学や美術予備校に通うことを選んだのも私だ。浪人して初めて、選べるようになった。
私が成長して、両親も暴力に訴えることはしなくなったものの、未だ権力バランスは不均衡だ。態度で、言葉で、経済力で、私を支配して思い通りに動かそうとする。
今までさせて貰えなかったから人生の選択初心者なのに、二人がかりであらゆる私の選択を貶し、おとしめて惑わそうとする。
でも私は、自分の人生だしそろそろ自分の意思で力で人生を選びたいんだ。
干渉しないでくれ。そう言って振り切れたら楽なんだろうけど、何度言ってもこの言葉は通じないし「あなたのためを思って」という恩着せがましい言葉で、私の気持ちを無視したまま色々な言葉が耳から流れ込んでくる。
親元を離れるために、ここから戦略を考え抜く
早く親元を離れたい。
そう零したら「そんなに焦んなくても大丈夫」と同じ毒親育ちの先輩に言われた。安心したし、そうだよねと思った。焦って進もうとしたら盛大にこけるのわかってる。
でも正直、どうしたら正解なのかわかんない。
お金を稼いで親元を離れたい。今すぐに。でもそれは現実的じゃない。
給料の高い職種って?私のやりたいことやれる?コロナなのに働ける?
焦って行動するべきじゃない。たくさん、沢山考えなきゃ。
抗うべき現実や考えなきゃいけないことがあって、毎日頭がいっぱいだ。
でも両親の思い通りにされてた時の自分からしたら、こっちの自分の方が断然好きだと思う。だから自分の好きな自分であるために、できる限り考え抜きたい。