27歳の独身で、アイドル歴14年。
今年の春、そのアイドル人生に華々しく幕を閉じる予定が、世界を震撼させる新型コロナの影響でコンサートが延期、図らずもアイドル留年生をやっています。
AKB48最後の一期生として、大きな決意を持ってした卒業発表。
「コロナめ。。。」という思いに駆られているかと思いきや、意外にもこの期間が自分を見つめ直すきっかけになっていたりします。
27歳、お年頃の女性であり、現役アイドルである私の、あまり大きな声では言えない過去といま思うことについてお話させてください。

デビュー後のめまぐるしさが落ち着き、気づいた「私は無趣味」

中学校1年生の3学期にデビューし、ありがたいことに少しずつ、そして順調に忙しくなっていった私達は毎日めまぐるしく立ちはだかるお仕事をこなすことに必死で自分の時間というものがほとんどありませんでした。
公演、レッスン、イベント、取材にテレビ収録。
一番忙しかった2010〜2011年あたりは年に3回しかお休みがないほどでした。
今思えば本当に恵まれている環境で“生きている”“求められている”って、この時が人生で一番充実していたように思います。

その弊害として、私にはこれといった趣味がありません。
それに気がついたのは自分が昔ほどお仕事を頂けなくなってからでした。

個人的なスキャンダルがあったり、AKB48の世代交代の波がある中で、私はお仕事が減り、自分の時間を持つようになりました。
それと同時に、暇で暇で仕方がないという感覚に人生で初めて陥ったのです。
忙しさにかまけて自分と向き合ってこなかった私は、自分のやりたいこと、すべきことが分からず、そのほとんどの時間をお酒に費やすこととなりました。

どこぞのネットニュースが私をこう言った「呼べばくる女」 と

二十歳になってからすぐに憧れのお酒を飲むようになった私は、飲酒時にしか味わえない高揚感、夜遅くまで友達と過ごせる安心感にどっぷり浸かり、お仕事終わりにはいつも同じメンバーで同じお店に集まり、現実逃避のような時間を過ごしていました。
その頃の救いは忙しかったこと。
どんなに楽しくても次の日はやってきて、アイドルとしての忙しい一日が始まる。
それでバランスが取れていたんです。
ですが、お仕事が思うようにいかなくなってからはどうでしょう。
次の日のことを考える必要も、自分のコンディションを整える必要もないといじけ、好きな時間までお酒を飲むことで暇を潰していました。
その結果、与えられた仕事が疎かになるわ、締めの炭水化物で体重が増えるわ、アイドルとは名ばかりの怠惰な人間になっていました。

かといって、私は特別お酒が好きなわけではありません。
種類も味も全然詳しくない。
ただ寂しかったんです。

夜1人で部屋にいると鳴る携帯、お酒というツールで心が通っているようなあの感覚が嬉しかったんでしょう。
そんなことで自分は必要とされていると思い込んで安心していた。
どこぞのネットニュースが言った「呼べばくる女」の完成です。

コロナのおかげで、初めて「人としての生活」を体験

そんな毎日が楽しいと感じるのも長くは続かず・・・と言いたいところですが、思ったよりは続いてしまい2019年。
虚無感に押し潰されそうな日々がやっと姿を現して、このままではいけないと強く思うようになりました。

何事にも中途半端な自分を変えたくて、決意した卒業。
それに伴って始めた禁酒(現在267日目)
突然やってきた新型コロナ。
その全てが重なって気付いたことがあります。
それは自分があまりにも“生活”をしていなかったこと。
これはどこにも言っていないことなのですが、私は二十歳になって一人暮らしを始めた時から、その時お世話になっていたスタッフさんに勧められるがまま、週に一回ハウスキーパーさんをお願いしていました。掃除洗濯などの家事全般、消耗品の買い出しまで、身の回りのことは全てお任せ。
裕福で多忙な大人がそれに頼ることは決して悪いことではないし、むしろ効率的だと思います。
だけど二十歳の時に自分で決めたわけでもなく、そのままズルズルと、さほど忙しくもなくなった小娘が、いつまでもそれに甘えていいわけがないとわかっていました。
ですが一度経験した楽な暮らしとの決別は腰が重いもので、なかなか決意できずにいた時、コロナにおける自粛要請によって毎週の当たり前が唐突になくなりました。

朝起きて、お仕事をして、飲みに出るの繰り返し、眠るだけの為に存在するただの箱だった部屋で
洗い物をして、洗濯をして、お風呂掃除をして、ゴミ出しをして気がついたんです。

「みんな生活をしてるから忙しいんだ」

私がまずやるべきことは趣味を探すことでも、通信講座でも、ましてやお酒を飲むことでもなく、人としての生活をすることなんだって。
それを最近まで気がつかなかったんだから、ほんとにあった怖い話です。

万年どシラフの私は、自分に宿題を探した。誰かに褒めてもらいたくて

こんな風に社会人として未熟すぎる私が少しずつではありますが生活を始めました。
アイドル留年生としての活動も心から楽しんでいます。
小さ過ぎる一歩でも、踏み出してみると人間、欲が出るもので、万年どシラフの私は生活とアイドルをやってもまだ余ってしまう時間に宿題を探すようになりました。

必ずやらなければいけないこと、期限があるもの、考える時間、批評される環境。

小学生の時は大嫌いだった宿題を大人になってやりたいと思う日が来るなんて思ってもみなかったけど『かがみよかがみ』での連載は、まさに私が求めていた宿題みたいでとてもワクワクしています。
せっかくもらった久しぶりの宿題、夏休みだけで終わらないよう真面目に丁寧に取り組みたいと思います。
何もできなかった日々、何もしなかった時間が無駄にならないように。
誰かに褒めてもらえる自分である為に。