お久しぶりです。
かがみよかがみに顔を出さなくなって早2年。 その間に私はAKB48を卒業してアイドルじゃなくなり、結婚をして妻になりました。いや、だから、その卒業についてや結婚についてこそコラムに書くべきだろと。私が私の上司なら「お前、ほんとわかってねーなー」とブチ切れていたことでしょう。自分でもわかっています。絶対に書くべきタイミングだったよなと。ただ自分の中であまりにテーマが大きすぎて、それに伴う中身をと思い悩んだあげくそれらの出来事は鮮度を失い今に至るというわけです。

と、言い訳はこれぐらいにして、今回は最近の私の小さな大冒険(矛盾)についてお話させてください。

平日は東京で、週末は夫のいる岡崎で。仕事も大切な人との時間も確保

結婚してからの生活は、今まで通り私は東京で仕事をして、夫のてつや氏は彼の拠点である愛知県の岡崎市で活動する。私にオフができれば岡崎に行って2人で過ごす。こんな具合いでした。だけ どある日、何が原因だとか決定的な出来事があったわけでもないのに「このままじゃなんで 結婚したのかわからないよぅ(涙)」とメンタルが軽くヘラってしまい......事務所の方の協力も得ながら平日は東京でできる限りお仕事をさせていただき、週末は岡 崎で過ごす、という現在のスタイルが出来上がったのです。自分がやりたいお仕事を続けながら、大切な人との時間も確保できる。平日に仕事を頑張ってから行く岡崎にはご褒美のようなきらめきがありました。そんな平穏に、とある異変が起きたのは少し前の土曜日のこと。

「明日広島で撮影が入ったから、終日家にいない。急に決まったからごめん」。

突然の夫からのライン。ちょっとだけ寂しかったけど、不平不満があったわけではありません。これまでも私が岡崎にいるときに彼が仕事で家を空けることはあったし、半日ほどのお留守番は慣れっこでした。ただ、私の過ごし方には少し問題があった。趣味を持たず、免許を持たず、元は縁がなかったこの町に気軽に誘える友達を持たない私の一人での過ごし方は昼過ぎまで寝て、配信で映画の一本や二本観れば充実したと言っていい方。夫が帰ってきて、私のポジションが朝と全く変わってないことに爆笑された日もあるぐらい何もしていないことも珍しくありませんでした。笑ってくれることに甘えながらも、彼がお仕事を頑張っている間なにもしていないことへの後ろめたさは少なからずあったし、「今日は何してたの?」と優しく聞いてくれる言葉の中には「暇してなかったかな?」という心配と「充実してたらいいな」という願いにも近いニュアンスが込められていることに気づいていました。

「夫が終日仕事」というこのチャンス、充実させて自信をつけたい!

そんな時に、「夫が終日仕事」という、恐らく今までで一番長くひとりで過ごすことにな るお留守番チャンス。この絶好の機会を自らの手でしっかりと充実させることで、これか らの大きな自信になると確信していました。
朝7時。眠たい目をこすりながらも一応新婚だしこれぐらいは……と玄関でお見送りをしてから、アラームをかけ少しの二度寝。9時過ぎに起きて身支度を整え、名鉄に乗り込み 30分揺られるとそこはもう名古屋駅であるという事実に、東京生まれ東京育ちの私はまだ少し不思議な気持ちになりました。

無趣味で一人遊びが苦手な私にとって、思い浮かぶ暇つぶしと言えば映画を観ることだっ
たので、前日に上映スケジュールを調べて、気になる映画を2本決めた。
上映10分前に到着して、見たいと思っていた「エゴイスト」の残り二席になったチケットを慌てて買い、存在すら知らなかったけど興味をそそられた「すべてうまくいきますよう に」のチケットも事前に買っておいた。

この時点で私は『はじめてのおつかい』のちびっこぐらい、もしくはご両親ぐらいの達成感を得ていたけれど、その高揚をあえて夫には伝えずにいた。好きなものは最後に取っておくタイプな私の可愛いもったいぶりである。映画はどちらも素晴らしく、愛について深く考えさせられる内容で、愛する人と当たり前に日々を過ごし続けられる保証はないという当たり前でありながらつい忘れがちな事実を教えてくれました。影響されやすい私は、日頃誘われては断っているスプラトゥーンをたまには一緒にやってあげようという決意をしたりしながら、「なんと、名古屋で映画を2本観たよーん」というラインを送った。普通なら「へぇ」で済む内容。ただ、放っておいたらずっとコタツから動かない私の出不精具合いを知っている彼は、やっと芽生えた小さな、でも大きな行動力に水を刺さぬよう「えぇぇぇぇぇ!!すごい!!行動的すぎ!!」と返してくれた。よくできた人間だと思った。もちろん、私はご満悦だった。

私は一人でもこんなに楽しい。心は弾んでいた

足取り軽くロフトに寄って、ティーポットとハートの型抜きを購入し、タカシマヤの上の 方で少し贅沢にお蕎麦を食べる。私は一人でもこんなに楽しい。金時計の周りを行き交う 人々、ひとりひとりに伝えたいぐらいに心は弾んでいた。

帰宅してまず、今日こそは手をつけようと決めていた洗濯に取り掛かることにしました。 お恥ずかしながら久しぶりにやる洗濯は洗剤を入れるところからつまずいてしまった。(2年半前のコラムでは「生活を始めた」と言っていたのに、仕事の忙しさにかまけて断念してしまっていました。陳謝)。家にあった洗剤の出るところがスプレータイプだからなのか、どれぐらい入れたらいいのかがちょっとよくわからない。適当というよりはテキトー と表記するのが絶対に正しいぐらいのテキトーさで洗剤を入れ、洗濯→乾燥が終わるとなぜか完璧に乾いてくれなかったけど、浴室に干すことにしてことなきを得た。

大充実の1日!となるはずが、まさかの……

時刻は20時を過ぎた頃、「新幹線乗ったよー」という夫からのライン。大体の帰宅時間を 把握して乾き切った洗濯物を取り込み、お風呂を洗い給湯ボタンを押す。溜まっていた食 器を洗って、ついでに掃除機もかけた。YouTubeにアップしたナイトルーティン動画のコ メント欄でも指摘されていた洗濯機のU04のエラー表示。生まれて初めて乾燥フィルター のお掃除もした。完璧。1日限定、憧れていた自分の好きなこともやりながら家事もこなす、理想のオフの過ごし方。夫が帰ってきたら今日一日のことを話し、いっぱいいっぱい 褒めてもらおうと企みながら気持ちよく「ブラッシュアップライフ」をリアタイしている と、スマホが震えた。時刻は22時半。

「名古屋で降り損ねたぁぁぁぁぁ」。

終わった。

次に停まる駅は新横浜。その頃、終電はもう出ている。1日頑張ったぐらいで他人様に褒めてもらおうというのは傲慢だったか......。初めて経験する岡崎で過ごす一人の夜に一抹の寂しさを感じながらも、朝から動いた充実感でぐっすり眠りにつくことができた。

そりゃあ誰だって、できれば誰かに褒められたい。今日も、明日も、明後日も。だけど誰でもない私が私を褒めてあげられることができたとき、今よりもっと自分を好きになれる気がした。