他人と比較癖があるけれど、私のたからものは、私の顔だ。
かわいい・美人というわけではない。
昔から他人と比較して、自分に自信がない私。

でも、顔は私のたからものなのだ。

好きなものは「好き」って言う友達が教えてくれたこと

転園と転校の経験から、とにかく目立ちたくなくて、普通の服を着て、好きなものをみんなに合わせて、出来ないことを隠すことに精を出していた。
出来ることも隠した。目立ちたくなかった。

実は英語を頑張ってスピーチ大会で勝ち進んで、NYの大会出場まであと一歩だったこと。
高校受験は苦手な体育と美術と理系科目が足を引っ張っていた分、努力して試験で満点を叩き出したこと。
海外に憧れていて、色んな国に行きたいタイプなこと。
10代になってもディズニープリンセスに憧れていたこと。
いつか私も、彼女たちみたいな綺麗なドレスを着たいな。
こういう自分を押し殺して興味のないドラマや音楽を詰め込む生活はつらかった。

高校生初日、とんでもない出会いが転がり込んできた。
出席番号順に座って担任の話を聞いていた時。
前の席はハーフのNちゃん。
何色のカーディガンを買うか頭の中で一人ディスカッションをしていた時。
担任のギャグが滑ったか、噛んだかして、笑いを誘うシーンがあった。
笑っちゃいけないところでも、一度ツボにハマると止められない私は、その時もシーンとしてる中、笑いが止まらなくなってしまった。
やばいやばい。初日から目立つのはまずい。
下を向いて肩が震えないように深呼吸しながら笑い、20秒後に顔を上げると、Nちゃんの全身がピクピクしてた。
かなり激しかった。

え…笑ってる? 間違いなく笑ってるよねこれは。長くない? ごまかす努力はしないんですか?
私もつられて笑いが止まらなくなった。

思わず話しかけた。
「笑ってたよね…?」
Nちゃんは、また、笑い出した。
爆笑しながらも、初日から目立ってしまったのではないかと不安になった。

彼女は、洋画で見るようなデザインのポーチやブラシ、キーホルダー、ヒールが高いローファーがとっても似合う。
制服を着こなしていて、彼女の世界観があった。
彼女曰く、日本人向けの服が似合わないという悩みがあるらしい。
ほどなくして、彼女は和菓子をこよなく愛していることが判明した。
100%外国人に見えるNちゃん。
お饅頭、ようかん、最中、たい焼き、大福、わらび餅、きな粉餅…。
ニヤニヤしながら大好物を述べていく彼女。
和菓子を羅列されるの、7年の付き合いでもネタに見えてしまう。
カタカナの食べ物を並べてほしかった。
だけど、食べてもいないのに嬉しそうなNちゃんを見ていたら、力が抜けた。
なんだ、好きなものは好きって言っていいんじゃん。
笑っちゃってもいいんじゃん。

自分を隠さず、感情のままに好きなことや興味があることは全部やった

私も始めた。
月9の代わりに洋画を観て、憧れの国アメリカでの2週間留学に挑戦した。
笑っちゃいけないことを我慢しなくなった。
感情や好きなものに素直になってみた。
苦手だった仲良しグループ行動に深入りせず、フラフラした。

高校卒業後、Nちゃんとは離れ離れになった。
Nちゃんのいない大学生活でも、感情のままにやりたいことは全部やった。
バイトやインターンのジャンルが違くても、授業が一人でも、流行からほど遠い服でも、同期がいなくても。
2年後、ひょんなことから海外で活動する団体に入った。
長期休みに、加盟国のどこかの国に集まって勉強するのがメインの団体で、色んな国に行った。
そして、パーティーやセレモニーでドレスを着る機会が何回もあった!!
色んな国に行けて、海外でドレスなんて!!夢ですか?
Nちゃんみたいに素直に動いていたら、半分夢みたいなことが舞い込んできた。

そろそろ顔の話を。
美術が苦手で手先が不器用な私はメイクもままならないし、二重を作るなんて不可能。
しかし、私の顔は厚めの唇と二重の目が特徴だ。
私が憧れていたのは、濃い色やゴツめのアクセサリーと海外の服。
だから大学に入ってから、プチプラ海外ブランドの服に5つのピアス穴をギラギラさせて生活した。
振袖は柄が大きい派手なデザインを選んだ。
大好きな青のドレスとアクセサリーが映えるシンプルなドレスの2種類をヘビロテした。
6年前のアメリカで買った大きいネックレスとキラキラのピンヒールとバッグを愛でてニヤニヤしてた。

それから、私はおしゃべりで人見知りはしない。
面白いことが大好きで、会話でもジョークになりそうな言葉をいつも探してる。
”N”ちゃんも、実は彼女の頭文字はNじゃない。”N”は、彼女の2文字目のアルファベットだ。頭文字を引用するルールはないし、2文字目のほうがツッコミどころあって面白くない?その性格すらも顔に出ているらしい。

おしゃべりで、すぐ笑う自分。でも「自信」を持って楽しんでいる

私は、ありのままの自分でいることに自信がついた。
流行りの服を着ない。性格を隠さない。
Nちゃんから、ありのままでいることを学び、見た目とマッチしていることに気づけた。ううん、違う。きっと持っていた見た目に近づいていったんだと思う。
きっと周りは理解できない憧れと好きに囲まれた。

価値観と性格が問われる就活の履歴書は「テロリズムについて学び、コンタクトレンズ屋でアルバイトして、高校生向けのキャリア教育に携わり、法学部の国際学生団体に入っていました。宗教を知るために海外で家を建てるボランティアと、片親の子供と遊ぶボランティアに参加しました。それから、薬膳アドバイザーの資格持ってます」というラインナップ。
面接でも、表情がくるくる変わる自分でいた。
自分を殺した就活をして大失敗した経験もあるけど、素直な自分が第一志望の内定につながった。
Nちゃんがいま頑張っているお仕事と一緒の業界に入ります。
Nちゃん、これからも好きなもので周りを固めて楽しい生活をしようね。