たからものは何?と聞かれるたびに私は世の中にありふれた回答を言う。
一度、正直に話したら引かれたからだ。当時、小学校低学年のわたしは友達のたからものは何?という質問に自信を持って答えた。
『私のたからものは全部!みんなお友達なの!』
返ってきた友達の言葉は予想していないものだった。
「何それ?」「そんなのあるわけないじゃん!」
まだ、幼かった私は純粋に自分の大好きな物たちを否定され、それ以降正直に話すのをやめた。
でも、一年一年と物たちと過ごし彼らとの思い出が増える中で恥ずべきことではないと気付いた。私は生まれて物心ついた時から、長い月日を経た物に神や魂が宿るいわゆる九十九神を信じている。
泣いて、笑って、旅をして。どんなときも一緒だった
私のたからもの全てについて語ろうと思ったが、量が多すぎるし彼らと私にしかわからない思い出が沢山あるので今回は中でも年数が長いものと、思い出深いもののみにしよう。
一つ目は、犬のパグのメガネケース。彼とは小学生の頃からなので11年目である。テストや受験、大変な勉強の時はいつも彼がそばにいてくれた。苦しいときは励ましてくれる私の戦友である。
二つ目は、アディダスのパーカーである。熱帯雨林のデザインでとてもお気に入りだった。防水機能付きで運動をしたり海外へ行く際は必ず一緒だった。そんな彼女が私の元から離れたのは、彼女と出会って3年目だった。ベトナムで移動中に無くなったことに気付いたのである。当時はもうそれはそれは探した。けど、見つからなかった。その夜、彼女と一緒に挑戦した初めての一人旅を思い出して悲しくて泣いた。きっと彼女は彼女のことを必要としている別の人のところへ行ってしまったのだろう。
新しい出会いの道へ。私から離れても彼らの物語は続いている
役目が終わってないけど、壊れてしまった物は直し、まだ使えるけど、私のところで役目を終えた物は次の素敵な出会いを願ってリサイクルショップやバザーに出し、役目を終えて壊れてしまった物は捨てる。もちろん、どんな形であれ私の元から旅たつ物には沢山の感謝を伝える。
そんな物に魂なんて…と思う人もいるかもしれない。
あなたがその物を大切にする分だけ物もあなたの事を大切に思い、必要な時に現れてあなたを支えてくれる。悲しい時には励ましてくれ、嬉しい時には一緒に喜んでくれる。
その物が壊れたのなら身を呈してあなたを不幸から守ってくれたという事であり、その物が無くなったのならあなたのところでの役目を終え、必要な人の元へ旅立ったと言う事である。
私はこれからも愉快な仲間たちと暮らしていく。