人はギャップに弱い。
普段は草食っぽい雰囲気の男性が、二人になった時には積極的だったり、男まさりな女性がふいに見せる涙だったり…。

仕事においても両極端な二つのサガを使い分けてこそ、うまく世渡りできるのではないだろうかと思う今日この頃です。

女性バーテンダーの私は、男と女の性を使い分けている

私はバーテンダー。“女性バーテンダー”というと、まだ頭数は少なく“バーテンダー=男性”というイメージが強い、男性社会な業界。

私がカウンターでシェイカーを振っていると、お客様から「かっこいい!」と言われることがあります。また、カクテルを作っている時は「所作が女性らしくて綺麗だね」と言っていただけることもありました。

バーテンダーの中でも“女性バーテンダー”という仕事は、とても面白いもので、これほどまでに「かっこいい」「女性らしい」の使い分けて、ギャップが重要な仕事はないのではないかと感じています。

華麗にかっこよく振る舞い、自信に満ちた「オスカル女子」

【かっこいい女子の代名詞『オスカル女子』】
女性のかっこよさとは、なんなのか? これを紐解くために、少し過去を振り返ってみます。私は中学と高校、大学は全て女子校という環境で育ちました。今でこそ真逆の男性社会に身をおいていますが、女性のみの世界を10年以上経験しております。女子校の世界に置いて、いつも人気者であったカテゴリーの女子たちがいます。それも名付けて『オスカル女子』。

オスカル女子とは、皆さまご存知あの『ベルサイユのばら』に登場するオスカルのような見目麗しい男性的な女性のことです。オスカルは女性で産まれたが、後継者となるため男性として育てられます。そのため、少々荒っぽい一面もありながらも、その美しい容姿と凛とした佇まいは、同性をも魅了してしまいます。

彼女たちには歌やダンスなど、決まったようにそれぞれ特技があり、パフォーマンスの際の自信に満ち溢れた表情がなんとも魅力的。そして、この自信こそが彼女たちの“かっこいい”所以なのでしょう。

バーの仕事に話を戻せば、カウンターで堂々とシェイカーを構える姿、数多あるお酒の中からお客様に合ったボトルを提案するプレゼン力。どれも自信がなければかっこよく見えません。人前で堂々とするためには、それ相応の知識を自分で勉強しなければならないですし、
かつてのオスカル女子たちも、人前でパフォーマンスをするために泥臭い練習を毎日行っていたはずです。

さらに、バーはあくまでも大人の社交場ですので、必要以上に他のお客様に絡むことはご法度です。とはいえお酒も入りますし、女性のお客様に声をかけようとする方もしばしば。お客様が不快な思いをなさらないよう、さながら本物のオスカルのように、お客様を守る姿も“かっこいい女性バーテンダー”の仕事と言えます。

バーテンダーは、指先まで優雅で美しく振る舞わなければならない

【女らしさの定番『アントワネット』】
一方、女性バーテンダーの女らしさとはなんなのでしょうか? バーの仕事は体力勝負ですが、接客中は常に優雅でなければなりません。バーではお客様の目の前でドリンクを作りますので、どんなに忙しくとも所作を常に美しく、どこを見られても恥ずかしくないように振舞うことが大前提です。

オスカルの流れを汲んでお話をしますと、ここでは『マリー・アントワネット』が大いに活躍してくれます。

ボトルに触れる指先やカウンター、フロアでの歩き方に至るまで、毎日鏡と向き合って自分を良く魅せる研究を怠らない『アントワネット』だからこそ、バーカウンターという舞台に華やかさを与えることができます。

普段から自分を磨くことに慣れている女性は、お客様の前でいかに自分を良く見せるか、表現力という点においては男性よりも幾分有利なのかと感じます。

多面性のある女性を魅力的といいますが、私は自分の中の男性と女性を上手く使い分けていきたい。

さあ、今日も、バーカウンターという舞台で皆さまに華麗なる一杯を。