この世界でただ一人、わたしを「可愛い」と言ってくれた人だった。

先日誕生日を迎えて24歳。その1ヶ月前に、付き合っていた人に振られた。

わたしたちはいわゆるネット恋愛で、同じコンテンツの仲間の一人だった。つまりはありふれた始まりで、ありきたりな終わりだったのだが、わたしはそれをひどく引きずっている。

この世に生まれて20年余り、初めて「可愛い」と承認された

わたしはずっと、「可愛い」に強いコンプレックスを抱いていた。わたしは生まれてこの方(家族親族を除いて)可愛いと言われたことがないのだ。もしかしたら実際はどこかで言われてきたのかもしれないし、「そんな風に思っているなんて被害妄想だ」「自意識過剰だ」と言われるかもしれない。
けれどもこれまでわたしが仲良くなる女性たちは贔屓目ではなく周囲が声を揃えて「可愛い」と称える子ばかりであったので、隣にいるわたしがコンプレックスを抱えるのは許してほしいと思う。

その上、これまでそれなりに男と関係を持ってきたが、「可愛い」と言われたことがなかった。言われるような関係ではなかった。愛して欲しいばかりに、承認して欲しいばかりに、自分自身を顧みなかった罰だろう。都合がいいだけの女として歩んでしまった罪だろう。

だからこそ、この世に生まれて20年余りで初めて「可愛い」と承認された事実に囚われている。
たとえお世辞や、贔屓目だとしても。たとえその彼が自分勝手の暴君で、常識がなくてDV気味だとしても。友人にお前の見る目がなさすぎると言われるほどだとしても。

この世界でただわたしのために存在した言葉が愛おしかった

今になって冷静に考えると、結局彼の感情に任せて付き合って彼の感情に任せて別れることになったので、かなり理不尽に振り回されていたらしいし、あのまま進んでいたらもっとたくさん涙を流すことになったのだろうとは思う。

それでも大好きだったのだ。

昼勤のわたしと夜勤の彼。正反対の生活を送りながら時々かち合う時間、LINEの返事を待ちながら彼の声に思い馳せたこと。朝から晩まで同じ趣味で共に喋り倒した週末、おふざけモードからふと恋人モードに切り替わった柔らかい声色にときめいたこと。すれ違って不安になった深夜、寂しさを零すと仕事の合間にかけてくれた電話に嬉しくて泣いてしまったこと。
この世界でただわたしのために存在した、ただわたしのために発せられる一つ一つの言葉が大好きでたまらなくて、愛おしかった。

そんなわたしは世界でいちばん可愛いに決まっている

もはや、思い出に恋をしているのだ。思い出を抱きしめて泣いている。思い出を愛おしんで叫んでいる。

ねぇ、泣かないで。泣かないでよわたし。
ううん、たくさん泣いていい。思うがままに泣いていい。大好きな人に拒絶されて、あの幸せな日々を失ってしまったのが辛かったよね。すべての言葉が嘘だったように思えて悲しかったよね。
いっぱい、いっぱい泣いていい。そしてたくさん泣いた後、鏡を見よう。にっこり笑って。
見て、大嫌いなわたしの姿が写っている。
けれどもわたしは、わたしのいちばん大好きな人に「可愛い」と言われた女。ひと時でも「好きだ」と言われた女。そんなわたしは世界でいちばん可愛いに決まっている。

今はまだ前を向けなくても、歩けなくても、涙が止まらなくても、その事実だけは大切に抱きしめて生きて行こう。
どんな未来になろうとも、どんな明日が来ようとも、きっとわたしは世界でいちばん可愛くあれる。