今回もたくさんのご応募ありがとうございました!

4月に緊急事態宣言が発表され、自宅にいる時間が長くなった頃に募集したテーマでした。
普段なら見逃してしまいそうな些細なことや、自分の気持ちに向き合って書かれたものが多く、このテーマならではだなぁと思いながら読ませていただきました。

では、さっそくかがみすと賞1本と編集部選3本を発表していきましょう!

各タイトルをクリックすると、それぞれの記事に飛べますのでぜひ読んでみてくださいね。

かがみすと賞

◆数年ぶりにお風呂を入れた。私はひっそりと、少しだけ人間になった(きり)

お風呂掃除をしてみて、お風呂に久しぶりに入る。あまりにも普通に、ないがしろにしていたことに、立ち止まった描写が素敵なエッセイ。

日常の一場面を丁寧に切り取っていて、なんだか小説を読んでいるような気分になりました。

バスマジックリンを吹き付け、空の浴槽の中にしゃがんで大きなスポンジを黙々と動かす。みるみる浴槽は泡立って、足元を滑らせながらも浴槽の四隅を、縁を、コンクの隙間を、私はせっせと磨いていく。

小さなお風呂、ひとりで黙々とお風呂を掃除するようす、一度始めたらなんとなく集中できちゃうあのお掃除の感覚が、読んでいてよく伝わってきます。

大昔にもらったバスソルトの大袋を引っ張り出してきて、分量がわからないから適当に、豪快に入れた。

バスソルトって自分じゃなかなか買わないし、棚の隅っこあたりに追いやられますよね…!「引っ張り出して」「分量がわからないから適当に」というちょっとした表現からも、きりさんが普段はお風呂に入ってないことがうかがえます。

タイトルにもありますが、「少しだけ人間になった」という表現も、わかるなぁと共感したすてきなエッセイでした。

編集部選

今回も編集部選として、3本、ご紹介します!

◆いつまで続くかわからない外出自粛は、自己肯定感を削いでいく(Karen)

「Go To トラベル」も始まり、少しずつ外に出る機会も増えてきた最近ですが、このエッセイを読むと外出自粛期間の息苦しさが蘇ってきます。

帰って寝るだけのためだった7畳ほどの部屋に1日中いることはすでに拷問になりつつある。

「社会人になってから週末出かけることと海外旅行にいくことだけを楽しみに生きてきた」というKarenさんの苦しみが伝わってくる文章。
かくいう私はKarenさんとは逆でインドア派なのですが、それでも「家にいなきゃいけない」という強制は苦痛を伴うものなんだな、と思い知らされました。

私はいったいなんのために生きているんだっけ?
週末遊べないなら働く必要あるっけ?
あ。でも働かないと家賃払えないのか。
生きるってお金かかるな…

最後のこの部分はとても共感しました。
本当に生きるってお金かかりますよね…最低限の衣食住だけでも結構かかるし。やっぱり、お金を稼ぐためのモチベーションとして、適度な外出や遊びは必要ですよね。

ちょっとお出かけをする、旅行に行く、ということが、いかに贅沢で大切なことかを思い出させれくれる文章でした。

◆久々のひとり暮らし、「自愛」のために食べようと思う(仲山遥菜)

過度な食事制限をして以来、一人で食事をすることが苦手だったという仲山遥菜さん。自粛期間中、どうにか一人で食事しなくては試行錯誤する中で、食事を「自愛」と考えて食べるようになったといいます。

Twitterで「自愛」と称した食べ物の投稿を目にするようになった。なかなか収束しない事態を不安に思い、心を痛める人々が、コロナ禍を生きる自分のためにコンビニスイーツやアイスクリームを「ご自愛ください」の気持ちで食べているようだった。

そういえば、私もSNSで「自愛」という言葉を見かけたかも、と思い出しました。家にいるしかないからこそ、自分自身に目を向けてこうした言葉が出てきたのかもしれません。

「ご褒美」ではなく「自愛」なのだ。頑張れ頑張れと鼓舞するのではなく、自分自身をそっと抱きしめてあげるような言葉でもって、食べ物を口にする。

そうか、「ご褒美」と「自愛」は違うよなぁ、と改めて気付かされました。というより、今まではなんでもかんでも「ご褒美」という枠に入れちゃっていたかも…。
食べることとの新しい向き合い方を教えてもらったような気がしました。

自分の変化を見つめて、そのなかでプラスの動きがあったことに、殺伐としたコロナ禍で少しほっとしたエッセイでした。

◆「引きこもり」をアドバンテージに。私の選んだ在宅ワーカーという道(杉本しほ)

 「引きこもり」8年目という杉本しほさん。とはいえ、友達と旅行もするし、在宅ワークで収入も得ているそうで、自分では引きこもりと考えていなかったそう。ですが、親戚や近所の人からは理解が得られず、苦しんできたといいます。

そんななか、外出自粛要請が発表されたことで状況が一変します。

このことをきっかけに、わたしの生き方について家族が理解してくれようとしている。世の中でリモートワークや在宅ワークが推奨されて、そういうひとたちが増えた。それに伴って、「そんな働き方もあったんやね」と言ってきたのだ。

マイナスのイメージが強い外出自粛ですが、こんなプラスの影響もあったんだなとしみじみ。
外出自粛をきっかけにリモートワークを取り入れた企業も多いようですし、これからより一層こうした働き方が普及していくかもしれませんね。私自身も在宅ワーカーの一人として、もっと理解が進んでほしいなと思います。

もしかすると、引きこもりがアドバンテージになる時代がやってきたのかもしれない。外出自粛要請が出ている、いまがチャンスだ。

「いまがチャンス」という考え方がとても素敵!
まさにコンプレックスをアドバンテージにしたエッセイで、読んでいて勇気付けられました。

以上、「おうちだから」のかがみすと賞の発表でした!
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