高校2年生の冬、教室に入ると一つの机に固まっていた数人の男子に顔を数秒間見つめられ、笑われた。その日から、学校の男子とは話せなくなった。

人前に立つことが好きだった私は、高2の冬を機会に変わってしまった

私は幼い頃から活発で、少し人見知りだったけれど人前に出ることが大好きな子供だった。スピーチ大会では代表になり、学芸会では主役のオーディションを受けて、常にリーダーに立候補して先頭に立つ子供だった。

中学受験をして、共学の中高一貫校に入学した。入学式でスピーチをしていた生徒会の先輩に憧れ、中学2年生からは生徒会活動を始めた。私は、友達が多かった。いじめられたこともなかったし、興味の幅が広く多趣味だったので、華やかな友達もオタクの友達もいた。特別可愛いわけではないけれど、クラスの男子がふざけて選んだ“可愛い女子ランキング”では、毎回5番くらいまでには入っていた。

そんな私だが、高2年生の冬は、1人で登下校することが多くなった。ずっと一緒に帰っていた親友が、学校に来なくなったのだ。恋愛関係でこじれた同級生が、彼女のとても素敵な容姿を笑い、SNSで周りを巻き込み彼女を嘲笑って、含みのこもった目を常に彼女に向けたから。

そんな時だった。1人で教室に入った私をその目が捉えた。直接何かを言われたわけではなく、私の顔を数秒間数人の男子が見つめ、ヒソヒソと少し話して笑った。「終わった」と思った。私の中で何かが崩れた。

その男子たちはクラスの中で派手なほうで、私は彼らと揉めた記憶がないし、笑われるようなことは何もないはずだ。では、何を笑われたのか？ 私の見た目ではないのか？ 決して細くはない少しぽっちゃりとした体型。私の目はSNSで見る美少女のような並行二重ではない。父譲りのすこし厚みのある鼻と唇。「ああ、私は顔を見て笑われるブスなのだ」と心に刻まれてしまった。

人の目が怖く、自分に「ブス」と言って笑っているように感じた…

次第に、みんなと同じ時間に登校ができなくなった。1,000人が同じ時間に通学路を通る。私は、生徒会長だ。自分の顔と名前を知っている1,000人に自分の容姿を見られると思うと、人の目が怖くなり、自分への視線すべてが「ブス」と言って、笑っているように感じた。冬なのに誰もいない時間に遅刻して登校し、日傘をさすようになった。なんでも話せる友達は「ブス」という言葉に囚われ学校へ来ない。私はどんどん壊れていった。

精神が不安定になり、無理なダイエットをして体を壊した。学校を休みがちになり、通い詰めた予備校でも人の目が気になってしまい、勉強だけに集中できなかった。小学生の頃から憧れていた親の母校の大学には落ちた。私が通うことになったのは、絶対に行くことはないだろうなと思っていた受験日に初めて訪れた女子大だった。

大学生になった私は、周りの友人から「とても明るくなった」と言われた。女子大には男子の“女子を品定めする目”がない。すっぴんで1限の教室に駆け込む女の子、アイドルのように可愛い女の子、ジャージで太陽の元、汗を流し運動に精を出す女の子。いろいろな女の子が共存し、学ぶ場所だった。

親にもらった顔を否定したくない。どうか自分の顔を愛せますように…

あの学校を卒業して1年半。私は今、仲のいい男友達もできた。好きな人もできた。男女数人でドライブに行ったり、遊園地に行ったりもする。

けれど、今でも自分の写真を見るのが怖い。嫌なのだから見なければいいのに、誰よりも自分の見た目に固執してしまうから見ずにはいられない。アプリで加工した写真を見て、一瞬だけ「この私は可愛いかも！」と思い、数秒後には自分の顔の欠点しか見えなくなってしまう。

心に刻まれた「ブス」は呪いだ。

顔は、自分の1番外側にあるモノだ。1番人から見られるモノだ。自分を大切に育ててくれた親が私にくれた顔。可愛いと言ってくれる顔。私も好きだと思いたい顔。

顔を否定しながら生きるのが辛い。ただ、どうしてもやめられないのだ。私は今でも、どうすればいいのかわからない。本当は誰よりもこの顔を好きになりたいのに、“人から見てどう思われるか”という天秤で、自分の顔を醜いと感じてしまうのが嫌なのだ。

前向きに生きたい。自分の顔を好きになりたい。もう「死にたい」と言いたくない。
この投稿が、私の第一歩になれますように…。