「女子は教室に残ってください」
小学5年生の頃、特別教室で『修学旅行のしおり』の読み合わせをした後に、女性教員がそう言った。普段騒がしい女子が、気まずそうに下を向いているという異様な空気の中、わたしは体育座りをして、先生が生理について話すのを黙って聞いていた。

それから時が経って、わたしに初潮が来たのは中学2年生の頃だった。

何回と生理を経験しても、いい気分で受け入れられたことは一度もない

休み時間、中学校のトイレで、自分の体から出る血と永遠に止む気配のない腹痛に恐怖を覚えた。チャイムが鳴っても教室に戻れなかった。14歳の少女はトイレの白い壁を見ながら、この苦痛と共に生きていかねばならないことに絶望を覚えた。

それから今まで、何回生理が来たのだろう。何十回と経験しても、生理をいい気分で受け入れられたことなんて一度もない。

生理はいつだって、来てほしくないタイミングで来ていたから。楽しみにしていた社会科見学や体育祭の大縄練習日、センター試験当日など例を挙げればキリがない。

それに中高生の頃は、ホルモンバランスが不安定で、生理が2ヶ月以上来ないこともあった。いつ来るのか不安でしょうがなかったけど、親にも、誰にも相談できなかった。

冬の夜、冷たい水で血がついた下着を手洗いながら泣いた。屈辱的な気分だった。
なんで生理があるってだけで、こんなに辛い思いをしなきゃいけないの??
町や通学中の電車で見かける女性たちは平気な顔をして生きているけど、わたしが異常なのかな??

不安と悔しさとが入り混ざったごちゃごちゃな感情が渦を巻いて、わたしは女として生まれてきてしまったことすら恨めしく感じていた。

女子大で気づいた。生理痛も辛いけど、生理を隠すことはもっと辛い…

生理のことを話題にするのはタブーだと思っていたから、そんなこと誰にも言わなかったし、言えなかったのだ。

けれど、女子大に入ってから、生理について堂々と話すことができるようになった。友達と使っている生理用品や、生理痛について共有するのは初めてだった。当然、生理が来ていることを隠す必要も無く「体調悪いの?大丈夫?」とか聞かれたときに「アレが来てて...」とか小声で言わなくても良い。

女子大に入って気がついたのは、生理痛も辛かったけど、生理について隠さなければいけない風潮はもっと辛かったということだった。生理痛は薬で治るかもしれないけど、生理を隠して生きるという孤独感は解決しない。だからこそ、生理についてもっとオープンに話せる場所や空気感が必要だ。

また、生理については不可視でなければならない、という雰囲気を無くすためにも、日本の性教育は見直されなければならないと思う。わたしが受けてきたような教科書をなぞった、生物学のお勉強をするだけの授業では、自分の身体も、相手の身体も大切に出来ない。

これは社会のためでもあるけど、わたしのためでもある。

「生理」をタブー視せずに、気軽に話せるような社会になってほしい

女子大は、わたしにとっての安全柵であって、そこから一歩外に出てしまえば、また生理がタブーな世界が待ち受けているように思えてならないからだ。

だから、わたしは社会を変えたい。
生理をタブー視しない社会を作りたい。

何年かかるか分からない。
生きているうちに実現しないかもしれない。

それでも、未来の誰かが、生理があるという理由でつまづいて転んだりしないように、地道にこの穴を埋めていきたい。