わたしは姉が自慢だ。なぜなら姉はなんでも人並み以上にさらっとやりのけてしまうからだ。小さい頃から頭もいいし字も綺麗。ピアノも独学で弾けたりと、同じ習い事をしてきたはずなのにわたしよりそつなく物事をこなすのだ。自慢だけど同じ親から生まれてきた私たち姉妹。なぜこんなに違うのだろうと思ったことはこの20年間で幾度となく感じている。

姉の優秀ぶりを間近で茫然と眺めていた

姉は小学生4年生の頃、小学校での授業がつまらないからと言って親に頼み込んで塾に通った。私なんて中学に入るまで塾なんて通ったことなかったのに。しかも嫌々通ったのに。小学4年生で塾に入った姉はいきなり模試でトップの成績を取り、塾の先生に私立の中学受験を勧められたそうだ。私立受験は大変ということで親はそれを認めなかったし、本人もその気ではなかったため受験はしなかったが、わたしの人生には中学受験の「ち」の字もなかった。

こんなこともあった。姉は小学六年生の時、学校の運営委員会という生徒会のようなものに入り、そこの運営委員長に立候補し、見事当選。運動会や様々なイベントで生徒代表の言葉を述べ、その度に母は先生やママ友に羨ましがられていた。2つ下のわたしその光景を茫然と眺めていた。この姉の自信はどこから湧いてくるのだろう、と心底不思議だった。

姉の優秀ぶりは学校だけではない。書道を習い始めても妹のわたしとの差は明らかであった。書道教室に通いはじめて数ヶ月。姉は瞬く間に書道の階級をあげていった。わたしが3ヶ月かかった昇給を姉は1ヶ月でやりのけてしまう。そんな感じであった。

あまりにもできすぎる姉にコンプレックスを抱いていた

中学生になってやっと私が塾に通い始めた頃、ふたつ上の姉は中学三年生。同じ中学だから「あの優秀な〇〇さんの妹さんはどこ?」と言ったように先生達から注目された。さぞかし妹もできるのでしょう?といったあの先生達の期待に応えられなくて申し訳なく思ったのを今でも覚えている。また中学生になると大切になってくる行事が定期試験だ。姉は中学1年生、2年生と優秀な点数を取ってきていて、母はてっきり中学のテストの問題が簡単なのだと勘違いしていた。主要5教科のみならず副教科も含め、全て90点以上を取ってくる姉を見ている親はわたしが必死になって取った92点のテストを当たり前のように見て、決して褒めてはくれなかった。逆に難しいテストでクラス1位を取ってもそれが80点であると不思議がられた。

いよいよ姉の高校受験のシーズンが来たとき、志望校は一択。県トップ、偏差値72の公立高校であった。先生も親も誰1人姉の受験に関しては心配していなかった。母は「お姉ちゃんが受からなくて誰が受かるの?」と言っていたくらいであった。そしてさすが、としか言いようがないが、見事姉はその高校に合格した。中学の中でトップ。その噂は瞬く間に広まり、「お姉さん◯◯高校なんでしょ?すごい!」と友達に言われた。誇らしいし、自慢だったのは事実だが、やはり姉よりできない自分が惨めであった。

その後自分の高校受験になったとき、本当に姉と自分は違うのだと自覚した。人生を頭の良さだけで見ているわけではないが、あまりにもできすぎる姉にコンプレックスを抱いていた。わたしは姉と違って中堅の高校を受験。姉の時は誰も心配しなかったが、わたしの受験はかなりみんな心配していた。運良くわたしはその高校に受かり、初めて姉と違うステージで楽しい高校生活を送る。

わたしにはわたしのいいところがある

姉と同じ小学校、中学校、塾に通っていたから、今まで同じステージにいたからかなり滅入ってしまっていたのかもしれない。高校生活でわたしは友人に「それはお姉さんが出来過ぎだよ」と、言われた。この言葉はかなりわたしの心を癒してくれた。

わたしにはわたしのいいところがある。世の中勉強だけではない。姉のことを「普通」だと思っていた母も今ではわたしのことも分かってくれているようだ。ずっと同じステージにいると滅入ってしまう、という人はたくさんいるのではないか。誰かと比べるのは当たり前。しかしそれが辛かったら違うステージに登るのもいいのかもしれない。