“妊娠したら、産前まで仕事は続けて、産休と育休を取って復職”。そんな未来を想定していた女の話をしてもいいですか?

私は、つわりで2度仕事を辞めている。1度目は22歳の春、出勤初日に妊娠が判明してから1週間弱で。2度目は28歳の秋、別の職場に就職してから半年で。

「つわり」は人によって違う。私は、つわりで2度仕事を辞めた

つわりというのは、人智を超えている。未だにこれといった原因はみつからず、ホルモンバランスが原因だろうとかなんとかかんとか。21世紀、本気出せよ…。

私のつわりは、重かった。水も飲めず、氷しか食べられない、氷すら食べられない日もあった。トイレがお友達。数日そうしていると、尿検査でケトンという物質の値が高くなるのだが、場合によっては入院を勧められることもあるそうだ(私は毎日点滴通院でやり過ごした)。歩くのもままならない、そんな状態で仕事を続けるわけにはいかず、私はつわりで2度仕事を辞めたというわけだ。社会経験半年と1週間弱の子持ち主婦(28)、爆誕である。

もちろん、つわりが軽いという人や全くなかったという人も世の中にはいると聞く(私は信じないけど)。1人目の妊娠時は重かったが、2人目は軽かったとか(それは信じた、でも打ち砕かれた)。そして、身重になってもしっかり出勤している女性も大勢いる。それ自体は素晴らしいことで、周囲のサポートもありがたいことだ。

しかし、そんな事実も決して当たり前のものではない。また、職場で元気に見える妊婦さんが、家庭ではどんな暮らしをしているのか、想像するだけで涙が出そうだ。ワーキング妊婦の皆さん、炭酸水で乾杯。

つわりに文句言う権利はなくとも、つわりで頭を下げる義務ってある?

「そのうち子どもが欲しいね」と話をしているとすぐ妊娠する、各方面からぶん殴られそうな女が私である。簡単に授かっておいて、つわりごときで文句言うなって? それは確かに。でも、つわりに文句言う権利はなくとも、つわりで頭を下げる義務ってあるの?

夫婦2人でいつか産み育てたいと思っている家庭の元に、その瞬間を選んでやって来てくれた赤ちゃん。100%の避妊方法が世の中に存在しないなんて、保健体育の教科書にも載ってるよ。妊娠のタイミングって、正解や不正解の議論が成立するの?

私が女性の上司に、つわりで仕事を続けられる状況に無いことを報告すると「つわりは病気じゃないんだから、欠勤しながらでも続けられないかな」と言われた。欠? 勤?? しながら???? それは、簡単には受け入れがたい提案だった。

このご時世、上司からしたら「辞めていいよ」と言うのも立場上難しいんだろう。私だってそんなことは理解している。「続けられないかな」というのも、好意的に捉えることだって出来る言葉だ。しかし、その時に相手が本音でどう思っていたのかは、今もお互いに分からないままである。

当時は話し合っているうちにつわりが重症化して、栄養代謝障害などを引き起こす重症妊娠悪阻という診断も下りたため、自然と辞める方向で話は進んだ。私は頭を下げながら、仕事を続けることから逃げた。いつ終わるのか分からない体調不良を抱えて、欠勤しながら仕事を続けるより、今すぐに辞めた方が色々とマシな様に思えた。

とはいえ分かっていたことではあるが、退職の手続きや人員の確保など、各方面で仕事を増やしてしまった。その事に関しては、下げた頭が上がらない。しかし元々、年休は片手の指程しかなかった。私はどうすれば良かったのか。

安定期までの「つわり休暇」があったら、取得したいですか?

そこで思ったのだ。体調が安定するまでの期間、もし休暇が取れるシステムがあったなら、私は仕事を2度も辞めずに済んでいる。ネットで調べてみると、どうやら“つわり休暇”がある企業も日本のどこかにはあるらしい。私にとっては、まるで都市伝説のような話である。

私は仕事を長く続けていないから、他人の休暇で一時的に仕事が増える現実を目の当たりにしたことがない。しかし、他の女性の産休や育休が、働き続ける女性を精神的肉体的に圧迫しているということは聞いている。じゃあ本来、それもひっくるめて誰かが何とかするべきだよ(丸投げだけど)。

そんなわけで大きな声では言えないが、小さな声で世の母親に聞いてみたい。「安定期までのつわり休暇、あったら取得したいですか?」あ、できれば頭を下げずにね。