幼い頃の私は絵本を読むのが大好きだった。
特にお姫様が出てくるものや女の子が活躍する絵本を読んでいた。1度絵本を読み始めると物語の世界にのめり込みなかなか現実に帰って来られない子どもだった。私がこのお姫様になりたい!私がこの主人公になりたい!と強く思い、ごっこ遊びが大好きだったし、お遊戯会では率先して主人公やお姫様の役に立候補した。大きくなったらなりたいものでもお姫様やセーラームーンなどと答えていた。他の子達が成長とともに現実的な職を挙げるようになっても1人変わらず夢見続けていた。周りから変わっているちょっと変な子とは物心ついた頃から言われ続けていたし、自分が変なことは薄々自覚していた。
そんななか小学生になった私に転機が起きる。
「声優」という仕事と出会ったのだ。
声優は声で演技をする仕事である。極端な話、声質があっているのであれば、ブスだろうがチンチクリンだろうがお姫様にも主人公にもなれるのだ!これは私にとって天啓だった!私は声優になるんだ!そう思い込んだら一直線でなり方を自分で調べて小学生のくせに声優養成所のパンフレットを大量に取り寄せ費用や授業内容、卒業生を比較した。そして気に入った養成所に入りたいと親に告げたがまだ小学生なんだから高校生くらいになってからにしなさいと言われてしまい頓挫した。それでも今できることをしようと委員会は放送委員会に入ったり国語の勉強に力を入れたり、養成所の費用のために貯金をしたりして過ごした。
私は普通に生きていくしかないのだと世界から言われた気分だった
そして大学生になり念願の養成所に入所した。しかし私はそこで大きな衝撃を受けることになる。声質が変わっている人が多くて私の普通の声は埋もれてしまった。声優の養成所なんだから当たり前なのだが私にとってはショックだった。また、容姿が整った生徒も多く、十人並以下の私は完全に講師から放っておかれるタイプの生徒になってしまった。それでも声優になりたいという気持ちは変わらず、養成所で出される課題に取り組み自分なりにメイクやファッション、髪型も整えた。どうしたら人の耳に残る可愛らしい声が出せるか自分なりに考えて練習した。しかし結果はダメだった。進級試験に落ちてしまった。これだけやってもダメだったのだ私は普通に生きていくしかないのだと世界から言われた気分だった。だから私は大人しく普通に普通の会社に就職した。
就職してからは地獄だった。学生時代は天然、変わった子で許されたことが許されずとにかく神経をすり減らしながら働いた。お酒も飲んでないのに、家に帰るまでに歩きながら寝そうになる玄関にたどり着いた途端にぶっ倒れるそんな毎日を過ごしていた。しかも建設業の事務員だったため気が強い人たちが多く自分が悪くないようなことで叱られたりとにかく毎日泣きながら過ごしていた。しかし今更仕事を辞めて普通からはみ出す勇気など無くただただ毎日会社側が潰れて働けなくなりますように!事故にでもあって働けなくても仕方ないね
と言ってもらえますように!天変地異でも起きますように!と祈っていた。
ずっと辞めたいけど自分から言い出せなかった私にとってはラッキーなことだった
そうしたら本当に天変地異が起きてしまった。コロナウイルスの流行である。また精神が限界だったので精神科にかかったところ発達障害であることが判明した。なんだそうだったのか自分の生きづらさは甘えや頭の悪さでなく障害だったのかと心から安堵した。またコロナにより業績が下がったため職を失った。ずっと辞めたいけど自分から言い出せなかった私にとってはラッキーなことだった。そうして私は決意した。どんなに真面目に「普通」をやろうとしたって普通じゃないんだから無理!だったら自分が1番やりたかったことを最後にもう1度やってみよう!そう思った。しかし28歳にもなるとオーディションが無いどころか養成所の入所条件にも引っかかってしまい中々入れるところが見つからなくて苦労した。しかし2021年の4月からまた声優の養成所に入れることになった。28歳で声優を目指すなんて普通じゃない。しかし私は今度こそ声優になる!普通を超えていく!今度こそ私のやり方でお姫様に主人公になってやる!