ヘアケアやヘアスタイル、髪のお手入れに今も昔も無頓着な私。
もちろん髪は清潔にしているし、周囲の人に不快感を与えないような見た目にしようと最低限の努力はしている。
しかし、子どものころから今までずっと同じようなミディアムのヘアスタイルであるし、髪の毛を染めたのも人生で一度きりだった。
成人式や卒業式などの人生の節目となる行事や、パーティーなどの特別なイベントに出席する場合を除いて、他の友人がしていたように色々なヘアスタイルを楽しんだり、雑誌やインターネットを見て工夫したりすることは少なかった。

そんな私が、髪と気分、気持ちのつながりを感じたのは、高校三年生の冬、受験シーズンだった。
年明け1月のセンター試験からはじまり、最終的に2月末まで続いた長丁場。実際に大学に行かないでセンター試験の得点だけで合否が決まるセンター利用という受験方法を使って合格した大学もあったが、大学へ実際に行き試験を受けた機会も6回ほどあった。
そんな、センター試験を含めた合計7回の受験のとき、私の髪型はいつも決まってポニーテールだった。
その理由はいたってシンプルで、とにかく自分が一番目の前の試験問題に集中できるからだった。

髪型をポニーテールにするだけで心のざわつきを抑えられた

私は、受験シーズン当時、肩下5cmくらいのミディアムヘアだった。髪の毛を結ばないでおろした状態だと、下を向いたときにどうしても顔の周りに髪がかかってしまい、視界に入るのだ。
普段のちょっとした作業や勉強ではあまり気にならなかったものの、受験となると話が違ってくる。
冬の寒さや、全然問題が解けなかったらどうしよう、力が出せずに不合格に終わったらどうしよう、そんな心配や不安で、ただでさえ集中するのは大変だ。
そんなとき、ひとつでも私の心のざわつきを減らす方法が、髪型をポニーテールにすることだった。

ポニーテールは、たいていの場合ヘアゴムひとつで簡単にできるし、時間だって何分ともかからない。その手軽さと、目の前の試験に集中できるという点で、私にとっては最高の髪型だった。そして、ポニーテールを作っているときは、短い時間ながらも、その動作でなんだか気持ちがきりっと引き締まるような気がしたのだ。無意識にも、「これから受験に向かうんだ!」と自分にスイッチを入れていたのかもしれない。

合格を勝ち取れた、自分で決めた自分だけのジンクス

センター試験の結果は自分の中で「大成功!」「満足できる結果!」とはいかなかったものの、そのあとに続いた大学ごとの個別試験では、うまくいき、結果として無事に第一志望校にも何とか合格することができた。センター試験が終わって初めての個別試験でポニーテールにしていったところ、合格したことが自分の中でジンクスのようになり、そのあとの試験もポニーテールにすることに自分の中で決めた。
また、ヘアスタイルとは関係がないが、服装にもジンクスを感じていた。私は受験のときはいつも学校の制服を着ていっていたが、ワイシャツの上に着るカーディガンを、毎回同じチャコールグレーのものを選んでいたのだ。
受験を支えてくれた家族や、仲の良い友人にも言わない自分だけのジンクスであったが、同じ髪型にして、同じカーディガンを選ぶことで、きっと気持ちが自然と落ち着いていたのだと思う。

受験生へ。少しでも不安を減らせるジンクスで力を出しきって

もちろんポニーテールにしたからそれらの大学の合格が勝ち取れたわけではない。
しかし、不安要素をひとつでも少なくして、ちょっとでもリラックスして受験という大きな舞台に臨めた一つの理由は、まちがいなくポニーテールにしたからだと思っている。
自分が一番目の前の試験問題に集中できるヘアスタイルを見つけられてよかった。心の奥底からそう思う。

もうすぐ大学受験シーズンがはじまる。今年の高校三年生や浪人生はイレギュラーな一年を過ごし、過去の受験生よりももっと不安や緊張を抱えていると想像できる。どうか、一生懸命勉強した成果が無事に出せることを、受験生よりも少しだけ長く生きている人生の先輩として、陰ながら願っている。