20代前半女性。身長148cm。同世代の平均身長を10cm程度下回る私は、傍から見たら間違いなく「小さい」。

コンプレックスの身長も前向きに考えられるようになった、はずだった

学生時代は、自分の身長にコンプレックスを抱いてはさんざん悩まされてきたが、大人になった今ではさほど気にしていない。そもそも今更悩んだところで身長が伸びるわけがないのだからという、いい意味での諦めモードに入ったのだった。

加えて高校生の頃からドラム演奏を始めた私は、音楽活動を通して「小柄な女性とは思えないダイナミックなドラム演奏」とお褒めの言葉をいただく機会が増えた。最初こそ嫌がっていたものの、次第にこれはおいしいギャップなのかもしれないと思い始めた。ずっとコンプレックスだった自分の身長を、少しずつプラスに捉えられるようになった。

そして最も幸運だったのが、周囲に私の身長をバカにする人間がいないこと。何かあるたびに「チビのくせに」と言われていた幼少期と違い、大人にもなればさすがに周囲の同年代も良識のある人間ばかり。私の身長をわざわざ貶す人間はいなかった。
こうして私はコンプレックスを乗り越えた。はずだった。

SNS上の心無い言葉に、私の古傷がじわじわと開いていく

ある日SNSで、「身長の低い自分を可愛いと思っている女の特徴」と題し、身長の低い女子に対する皮肉をたっぷり書き連ねた投稿を見かけた。140文字までしか入力できないSNS媒体に、赤の他人が箇条書きで上限いっぱいに並べた数々の心無い言葉。さらに共感のリプライが私の心に追い打ちをかけた。どこの誰かも知らないSNS上の人間たちから私のからだに向けられたような視線は、知人からからかわれるよりもずっと不気味で腹立たしかった。
周囲にからかわれる、高いところのものに手が届かない、着たい服もサイズが合わず、思い通りのおしゃれができない…。私は、学生時代のたくさんの困難を乗り越えて今に至るのだ。乗り越えたはずのコンプレックスだったが、投稿を目にした瞬間、心の古傷がズキズキ傷んだ。

何も知らない人に、なんで好き勝手言われなきゃいけないの?

私が単純に「低身長の私=可愛い」と思っているかというとYESとは言えないが、私は自分の身長を愛おしく感じている。だって、生まれてから苦労を積み重ね、頑張ってきた小さなからだだから。これまで一所懸命人生を歩んできたからだだからこそ、この身長が愛おしいのだ。

それなのに、コンプレックスを乗り越えたら乗り越えたで、どうしてこんなことを言われなければいけないのか。身長の低い人間は、自分を好きになること自体許されないのか…。
知らない人からSNSで貶されるなんて現代っぽいな、とのんきなことも考えつつ、傷ついた。

心の傷は消えないけれど。頑張ってきた私のからだを愛おしく思う

こんな出来事を踏まえて、意識したことが二つある。
まず一つ目は、コンプレックスを乗り越えても過去の心の傷は消えないということ。今更身長なんて気にしないと言いつつ投稿に反応してしまったのは、幼少期の苦い過去が蘇ったから。SNS上で向けられた視線は、自分の古傷と向き合うきっかけになった。正直あの投稿さえなければ今更こんなに悩むことはなかったのに…と思う一方で、愛おしいからだと一緒ならこの心の古傷もまとめて背負っていこうと決心した。

二つ目は、なんだかんだ言って私は自分の身長が好きだということ。まさかSNS上の他人に間接的に嫌味を言われるとは思っていなかった。けれど、そんなことをされてもやっぱり私は自分の身長が愛おしい。誰からどんな視線を向けられたって、この小さいからだと一緒に頑張ってきた過去は嘘じゃないから。ついでに言うと、母親からもらった、母親と全く同じ身長だ。誇らしい。
今日も今日とて、自分のからだは愛おしい。