私は、ノースリーブのトップスやワンピースを着る際、どんなに暑くても、薄手のカーディガンを羽織ることにしている。あることがきっかけで、どうしてもノースリーブだけで外を歩くことに抵抗があるのだ。私は2019年の秋から日本より気温の低いイギリスに移住したため、今では夏でもノースリーブを着ることはないが、ノースリーブだけで外出することに抵抗があったのは、日本にいたときのことだ。

脇に性的興奮を感じる人がいるということに衝撃を受けた

私がノースリーブだけで外を歩かない理由は、日焼けしたくないから、というのもあるが、もっと大きな、決定的な理由となったのは、ひょんなことがきっかけであった。それは私が大学生だったころにTwitterで目にしたとあるツイートである。
私が好きだった女性のモデルさんについてTwitterで検索していたときのこと。好きな洋服ブランドのカバーモデルとして、ちょうど春夏のカタログが出たところだったので、その情報を得たいと思っていたのだ。女性に人気のあるモデルさんだったので、検索して出てきたツイートのほとんどは、彼女のスキンケアやメイク方法、出ている雑誌やテレビに関するものが多かった。私のように、純粋にそのモデルさんが好きでつぶやいているものと思われた。しかし、そんなものの中に、1つ異様な投稿があった。

それは、「ノースリーブたまらん。○○ちゃんのワキ、ぺろぺろしたい」といったものだった。一瞬、そのツイートを見たときに意味がよくわからずフリーズしてしまった私。そのツイートには、モデルさんがノースリーブの服を着た写真があった。脇は少し見える程度で、あからさまに脇を強調した写真というものではなかった。その投稿主のプロフィールページにいってみると、脇についての同じようなツイートが女優さんやタレントさん、モデルさんなど、あらゆる女性の写真とともに投稿されていた。もちろん、それだけでこの投稿主を男性と決めつけることはできないが、脇に性的興奮を感じる人がいるということに衝撃を受けた。そんな現実を思い知ったのだ。

たとえ文字でも、私に恐怖感を植え付けるのに充分すぎた

このとき感じた不快感、不愉快さ、気持ち悪さが、私をノースリーブだけで町を歩くことに抵抗を感じるようになったきっかけだ。「そんな些細なことで?」「自分が言われたり、対象になっているわけでもないのに」「自意識過剰でしょ」……そんな言葉が聞こえてきそうであるが、私にとっては、それくらい衝撃の大きな出来事だったのだ。

先ほどのツイートを投稿した人が、どんな気持ちでそれを書き、わざわざ万人から見える場所に投稿したのか、その真意はわからないし、きっと何も考えずに思ったことをそのまま文字にしたのだろう。おふざけ程度の軽い気持ちなのだろうし、もちろんその人の投稿の対象になっていた女優さんやモデルさんたち本人を目の前にしても言えるのかと聞けばきっと言わないだろう。それでも、たとえ文字でも、私に恐怖感を植え付けるのに充分すぎるくらいの力を持っていた。

性的な目で身体や身体の一部が見られることに耐えられない

人がどんなことに性的興奮を感じるかということについては、さまざまな意見があり、先ほどのような投稿があるのも、ある程度仕方のないことなのかもしれない。だが、どうしても、自分でない他のだれかであっても、性的な目で身体や身体の一部が見られることに耐えられないのだ。もちろん、女性がノースリーブだけで外を歩くことに反対しているわけでもない。どんな服を着るかはその人の自由であるし、他者から見られることに抵抗を感じない人、抵抗を感じても気にしない人など、さまざまだろう。しかし私にとっては、誰かが性的な目線で見てくるかもしれない、そんなことを思うと、恐怖でしかたなくなるのだ。

冒頭でも述べた通り、現在私は夏でも湿度が低く、涼しいイギリスにいるためそもそもノースリーブを着る必要性がないが、日本は年々、夏の暑さが厳しくなっていると思う。そんなとき、世の中の女の子や女性たちが好きで着たノースリーブによって、他の誰かによって何かの被害に遭うことなどがないよう、ひたすらに願っている。