「別人にはなれない…。カンジダ症の自分でも『恋する権利』はある!」を読んだかがみすとのスンアさんから、エッセイが届きました。

<かがみよかがみ>を読んでいて、こんなにも胸の詰まる、いたたまれない気持ちになったのは初めてでした。余計なお世話かもしれない、なんの役にも立たないかもしれない。それでももし、あなたが一人で辛い気持ちを抱えているのなら。私の体験を交えたエッセイを通して、あなたを応援したい。ただそれだけの気持ちで、今この文章を書いています。私は、とある田舎の端っこで、一生治らない性病を抱えながら生きています。

検索結果に言葉を失いました。私のヘルペスは、性病だったんです

ここで少し、私の話をさせてくださいね。社会人になって今更、学ぶことの大切さに気づいた私は、仕事をしながら資格試験の勉強に勤しんでいました。学ぶことの大切さに気づけたことはよかったものの、残念ながら計画的に勉強をする習慣を身につけることはできず、言葉通り<短期集中>型の私は寝る間を惜しんで勉強をしていました。

そんな日々を過ごしていたある日の夜、一人寝ようとベッドに入った瞬間、お尻に鈍い痛みが走りました。触ってみると熱を持ったできものがお尻から腰にかけて、数個できていました。ダニか何かに噛まれたのだろうか、そう思いながら次の日訪れた病院で先生が淡々と一言、
『ヘルペスですね』そう言いました。

検査も特別な処置もなく、塗り薬だけをもらい病院を出た私は、一人ぼんやり考えました。『ヘルペス』って、よく聞くじゃないですか。よく疲れたときに口にできる口内炎のような、あれです。お尻にもできるものなんだなあ、知らなかったなあなんて、そう思いながらなんとなくそれをインターネットで検索した私は、検索結果に言葉を失いました。私が持っているヘルペスは、性病だったんです。

ヘルペスには種類が2つあり、世間一般によく言われているヘルペスは主に口元など上半身に症状が現れます。そして私のように下半身に現れるものは、性器ヘルペスという、性病の一種なんだそうです。あなたの抱えるカンジダ症状と同じく、体が弱ると症状が出てきます。そして一度かかったが最後、完治することはなく、一生付き合っていかなければならない病気です。

『きちんと知ること、知ってもらうこと』そして『何を信じるか』


私にも、お付き合いしている人がいました。幸い、彼とはまだ一度も性行為をしていませんでした。私と交際を続ければ、いずれ性行為をすることになる。そうすれば、私のせいで健康な彼まで病気になってしまう。愛する彼のきれいな体が、私のせいで、汚れてしまう。一人でたくさん泣いて考えて、私は正直にヘルペスのことを打ち明け、彼とお別れをすることにしました。

私は、傷つくことが怖かったんですね。いわば先手必勝というように、自分から一人になろうとしたんです。ところが、私が告げた‘提案’への、彼の答えは<NO>でした。勿論、彼はかなり動揺していたものの、一人ヘルペスについて詳しく調べたようで、その上で『その病気が君と僕とが別れる理由にはならない』と、はっきりそう言いました。

彼はとてもいい人です、そのことに違いはありません。そんな彼に出会えた私は、運のいい人間だと思います。じゃあ私は、私のように性病を抱えた人は、その運だけを頼りに恋をしなければならないのでしょうか。私は運良く、理解のある彼に‘選んでもらった’のでしょうか。いいえ、私はそうは思いません。必要なことは、『病気についてきちんと知ること、知ってもらうこと』だけで、その上で各々が『何の情報を信じるか』なのだと思います。

私がこの病気を検索したとき、<この病気にかかったら人生詰んでる>、<ビッチがかかる病だ>、そんな投稿に目が止まりひどく傷ついたことを覚えています。しかしきちんと調べたところ、ヘルペスは体の抵抗力を下げないよう気をつけて生活をすれば発症自体を抑えることができ、また性行為についても発症時を避け、きちんと避妊具を装着した上で行えば相手への感染も予防できる病気であることを知りました。

『きちんと知ること、知ってもらうこと』そして『何を信じるか』。少し大げさに言いましたが実はこれ、普通の恋愛に必要なことと、なんら変わりないんですよね。性病がなくたってお互いが理解できなければ、誤解が生じればお別れするんですもの。私達は、当たり前に恋をする権利があって、私もあなたもただ、ごく普通に恋をするべき女性です。

病気を気負うことはありません。きちんと理解を示してくれる人がいる

私は、彼に打ち明けまず理解を求めようとしたあなたを、勇気のある素敵な人だと、心底そう思います。私は彼に向き合い、傷つくことを恐れ、お別れという形で彼から逃げようとしました。あなたのエッセイを読んで、自分の愛している人に対してとても失礼なことをしたのだと反省をしました。

あなたの元彼が理解のない、悪い人だとは決して思いません。
しかし性病は、汚い病気ではありません。遊んでいる証拠でもありません。誰にでもかかりうる、風邪と同じような存在なのだと私は思います。

この先、私が今の恋人とずっと一緒にいられる確証なんてどこにもありません。でも、今の彼と別れたからと言って、私はこれからも病気のことを気負うことはありません。きちんと理解を示してくれる人がいることを、この身を持って知ったからです。あなたにただその事実を、そんな経験をした人間がいることを知ってほしくて、このエッセイを書きました。

拙い文章でごめんなさい。気分を害するような表現があったらごめんなさい。私はあなたにとって会ったこともない他人で、きっとこれから先も会うことはない他人です。だから話半分で聞いてくれてもいいんです。だけどこれだけは知っていてほしい、あなたに恋する権利があること、あなたの知らないどこかで、あなたを応援している人がいること。体に気をつけて、どうか元気で過ごしてください。あなたの人生に、たーっくさんの幸あれ。