似ているのか違うのかわからないけど、根本的な部分は近しい二人
夫とはよく外食で頼むメニューが被る。セットメニューで副菜とドリンクを選ばなければならない時も全て同じものを選択することがよくあるし、セルフ式の食堂でも知らず知らずのうちに全く同じものを選び取り、いざ着席して相手のお盆を見て驚き合った事もあった。
かと言って、食べ物の好みが一致しているかと言うとそうではない。東北出身の私はしょっぱい味付けが、九州出身の夫は甘い味付けが好みだ。
私が人間関係の愚痴を吐くとひどく賛同してくれる時と全く聞かず生返事だけ返される時がある。これは夫が愚痴る時も同様だ。
お互いゲームが趣味だが私はソシャゲ や3Dアクションを好んでいるのに対し、夫はコマンドRPGや謎解きを好む。
生い立ちも、就いた職も違うが、根本的な、薄暗い部分は近しいものを感じている。社会生活はギリギリ営めるが基本的に人間嫌いで大勢より個人で楽しみ、積極的に感情を共有したいとは思わない。人間としてどこか欠けている事は自覚しつつもそれをわざわざ矯正したくない。とにかく自分の閉じた心を守り通したいと、必死にもがいてきた。
そんななので、互いの実家に結婚の挨拶に行った際は両家の親族から寝耳に水と言った様子でひどく驚かれた。当然である。
子ども、私、夫、皆方向性は違えど、不器用ライフを送るファミリー
薄暗い部分が一致しているから、結婚を決めたかというとそれだけではない。夫がどう思っているかは知らないが、私は夫以上に面白い人はいないと思っている。
職業柄驚くほど博識だが、興味のない事にはとことん無関心なのでたまに一般常識が抜け落ちたりしている。子どもっぽい言動や嗜好も残っていて、例えばおかずに目玉焼きを追加をすればどんなに不機嫌でも大体持ち直してご機嫌になる。寝起きの顔が魚のクエに似ているのも面白かわいい。
何より人との交流を好まない反面、誰かが辛い目に遭うと文字通りできる限りの事をする。方法として合理的なやり方を選んでしまうので、寄り添いを求める人には冷たいと感じられるかもしれないが、そこには夫なりの優しさが確かにあるのだ。つまり非常に不器用であると同時に、非常に愛らしい人なのだ
かく言う私もなかなか不器用で、夫も呆れるような事をやらかす事がよくある。ついでに私たちの子どもも私たちと方向性は違えどなかなか不器用な子で、彼らも一生懸命不器用ライフを送っている。不器用ファミリーここにあり、である。
歩調もタイミングもバラバラだけど、今日もあなたと笑ってスキップを
不器用ファミリーは運動面も不器用なので、一緒にスキップをしようとすれば歩調は合わないわ、タイミングは自由過ぎるわで仲良くスキップしているようにはとても見えないだろう。
それでも、やり続けているうちにたまたまタイミングが合って同じ動きをした事に驚いたり、お互いの変な動きを見てゲラゲラ笑ったりする瞬間が訪れるかもしれない。不器用で歪なスキップしかできない自分自身を愛しきれない私たちも、夫婦や家族の形でならその歪さも笑えるのだ。