性格や食の好み、性質も何から何まで背中合わせな私たち
わたしの夫はのんびり屋だ。
最近のお気に入りの場所はベランダで、気づくとベランダに出て変わり映えのない景色をぼーっと眺めている。
わたしの夫は手先が器用だ。
裁縫が得意だし、家具を組み立てた日には、お店で見た以上の素敵クオリティにできあがる。
わたしはせっかちだ。
行列のできるパンケーキ屋に並んだことがないし、コップに注いだ炭酸飲料を溢れさせるのは日常茶飯事。
料理は得意だけど(食べるのが好きだから)、家庭科のエプロンは結局最後まで完成しなかったし、家具を組み立てるとなんでかいつも部品が余る。
わたしはキノコが嫌いだけど夫は大好きだし、夫はトマトが嫌いだけどわたしは大好きだ。
夫はSFやサスペンスが好きだけど、わたしはコメディやほんわか日常ものが好き。
わたしはよくお爺ちゃんお婆ちゃんに道を聞かれるけど、夫は知らないチンピラによく絡まれている。
要するにわたしと夫は見た目も食の好みも、性質も。何から何までけっこう真反対を向いているのである。
彼との結婚に周囲は唖然。その理由は真反対な性格とかじゃなかった
今年のはじめ。そんな彼と結婚をすると言ったとき、親も友だちも総出で反対した。
真反対だからじゃない。
夫はバツイチ44歳、
わたしは初婚。
そしてわたしがいま、26歳だからだ。
なんで離婚したの?子どもは?どうせすぐに介護だよ?
きっとあなたよりずいぶんと先に、死んでしまうよ?
みんなそう言ったし、わたしもそう思う。
夫に子どもはいないけれど、これから子どもができたとして成人する頃には彼はとっくに定年を迎えているし、コロナ不況でつい先日夫が勤めていた会社が倒産したばかりだ。
40代の就活なんて、そうそううまくいくもんでもない。
というかそもそも、子どもができるかも分からない。
とは言え夫婦仲は良いし、お互いにお酒が好きでアニメも好きだから一緒に飲み歩きしたり聖地巡礼をしたり、毎日楽しくやっている。
たまにちょっと贅沢をして旅行に行ったりなんかして。
だから子どもができなくても、二人で愉快に暮らせればそれでいいと思っている。
ずいぶんと歳が離れているから夫が先に死んでしまうかもしれないけれど、それって実は歳が離れていなくても不安は変わらなくて。
寿命を迎える前に、ある日突然事故や病気で片割れが死んでしまうかもしれないし。もしかしたら自分が先に旅立ってしまうことだって、あるんだから。
夜中にふと見つめる夫の寝顔。結婚して半年、私は泣き虫になった
夫はよく言う。
俺がもう少し若ければ。
俺がもう少しいい会社で働いていてお給料をいっぱいもらえていたら。
俺とちがって、妻は前向きで猪突猛進だよね。前ばっかり見てる。そこが好き。
でもね、わたしは。
わたしは、ふと夜中に目覚めて隣で眠る夫を見たとき。
無性に涙が込み上げてくることがあるんだ。
夫には少しでも長く生きて、同じ時間をいっぱい一緒に過ごしてほしい。
わたしより先に死んだら殺すからって、冗談めかして言ってるけれど。
でもきっと、この人はわたしより先に死んでしまうから。
それを思うと、今日このまま一緒に肩を並べて永遠に目覚めなければいいのにと、思ってしまう。
いまが楽しいからこのままずっと二人でお気楽に面白おかしく暮らしていければそれでいいやと思うけど。
でも、あなたが先に死んでしまうのなら
せめて忘れ形見を、わたしにちょうだい。