「まつ毛長いね!」

小さい時から周りに言われてきた言葉。多分、褒め言葉なんだろうけれど、いまいち反応に困る。
例えば、目が二重でぱっちりしている、とか鼻がすらっと高い、だと明らかに容姿が優れていることを表現しているけれど、まつ毛が長いのはただ、髪の毛が長い短い、身体が毛深い毛深くない、の差と変わらないのでは?と思うのだ。

怒られたのはまつ毛のせい。半泣きで身の潔白を訴えた。

まつ毛が長いと目が大きく見えるじゃないか、と思うかもしれないが、短くても目が大きい人もいれば、逆も然りなのだ。現に私も、奥二重で別に目が大きいわけではない。
だから、まつ毛に恩恵を受けているわけではないし、むしろ嫌な思いをすることもあった。

高校生になったばかりの時、私は何故か生徒指導室に呼び出された。鬼のような形相をした生徒指導の先生を前に、私はか弱い子羊のように震えていた。
一体、私が何をしたと言うのだ。規則に倣い、校則の範囲内でおしゃれを楽しもうとしているだけではないか。
匂い付きのハンドクリームを塗ったのがまずかったのか?いやでも、他の子も塗っているし禁止されていないはずだし……

なんてことを悶々と考えていると、先生は私の顔面をめがけ指を指した。
「なんだその目は!?学校では化粧禁止と言ってるだろうが!」

どうやら目の周りが黒く見えてアイラインを引いていると思われたらしい。私は半泣きになりながら訂正し、身の潔白を伝えた。
先生は訝しげな顔で、私の目の辺りをまじまじと見た。なんとか誤解は解くことができたが、紛らわしいことをするな!と尚も怒られた。
それからしばらくは自分のまつ毛を恨み、切ってしまおうかと本気で考えた。

まつ毛を褒められたら、一体何と答えたらいいのか

こうした経緯もあり、私は特に自分のまつ毛が気に入っているわけではない。
よって、「まつ毛長いね!」に対する正しい返答は何なのか模索中である。

そんなことないよ!なんて言ってしまうと、褒めたつもりなかったんだけど何謙遜しているの……なんて思われるかも知れないし、短いのもいけてるよ!なんて言うと嫌味か?と思われるかもしれない。

他の人は、特に自分が気に入っているわけでない部分を褒められたとき、どうしているのだろう。
褒められ続けると愛着が湧いてくるのかしら。残念ながら私はまだ湧かないが。 

ちなみに現在の「まつ毛長いね!」に対する返答は、「ありがとう!栽培しているからね!」と、至極意味不明なものである。
当然、相手からは、あ、あは。と、乾いた笑いが返ってくるので丁度良い返答を急募している。