「きらきらしていて天使みたいだね」
彼のその一言で20年間の全ての私が救われた。

生まれた時から癖っ毛で常に髪は爆発状態。小学校に入ると周りの男子にからかいの対象にされていた。幼いながらもコンプレックスに感じていた私は何度も親に「なんでこんな変なとこ似てしまったんだ」と強く当たった記憶がある。
11歳の誕生日、哀れに思った母が私を美容室に連れて行ってくれて、生まれて初めてストレートパーマをかけた。施術が終わり、完成した新しい自分を見た時の感動は今でも覚えている。
中学にあがってからも定期的に髪を真っ直ぐにしてもらっていた。何度も何度も矯正された私の髪は痛み、色はどんどん地毛より明るくなっていった。ある日、中学の担任から職員室に呼び出され、「髪が明るいのではないか。来週までに黒く染めてきなさい。」と指導を受けた。それからは「校則ならば仕方ない」と縮毛矯正だけでなく、黒染めも定期的に行っていた。

どんな時も真っ直ぐにしていた髪を、癖っ毛の彼は何度も褒めてくれる

高校にあがると、周りの髪の綺麗な女子たちが羨ましくて仕方がなかった。何度も本来の姿を矯正している自分の髪を、他の子達と比べられているような気がして嫌だった。友達や恋人と泊まりで遊ぶ際もお風呂上がりのすっぴんの状態でも、髪はヘアアイロンでセットするのが普通だった。
社会人になって、今の恋人と出会った。奇遇にも恋人も癖っ毛で、だけど私とは違い「これが自分のチャームポイントだ」なんて言っていた。私自身も自分の髪はコンプレックスなのに彼の髪は愛しさすら感じていた。
多分これは自信の差なんだろうと理解はしていた。私は敢えて彼に「くるくるの髪の毛かわいいね」なんて言ったことはなかった。それは良くも悪くも他人に自分のルックスを評価されるのは不快に思われるかも・・・と考えたから。
でも彼は何度も形を変えて傷んだ私の髪に「君の髪は光を通してキラキラしているの、なんだか天使みたいで素敵だね」なんて言葉をくれる。

彼の一言が大きな支えになり、ほんの少し自分の髪を好きになった

そんな些細なことで、と思われてしまうかもしれないが、数十年間髪のことで他人に揶揄われたり哀れみの目を向けられたりした経験がある私にとってはすごく大きな支えになっている。
今でも決して髪に対するコンプレックスが消えたわけじゃないし、これから先も何度も何度も元の髪を押し殺して真っ直ぐで素直な形に変えると思う。だけど今までと違うのはほんの少しだけ自分の髪を好きになれたことと、昔に他人から向けられた心ない言葉たちを気にせず過ごせるようになったこと。
「くるくるだって、偽物の真っ直ぐだってどちらも自分の髪なんだ」って胸を張って外に出られるようになったこと。人目を気にして寝る前にヘアアイロンをかけていた私はもういない。
朝、愛しい恋人と「今日もお互いひどい寝癖だね笑」って笑い合いながら目覚めるのも、お出かけ前に髪が段々と整っていく過程も好きだ。私はこの素直じゃない自分の髪とこの先ずっと楽しく付き合っていこうと決めた。