家族とは何か、本来どうあるべきものなのか、と言うことを常に考えている。
私の家庭は完全に崩壊している。家族全員が不仲であり、一緒に暮らしているもののルームシェア状態だ。そんな環境で生きてきた私は家族と言うものに非常に執着しており、苦しんでいる。

話を聞くたび消化不良になる彼と家族の話。ふつうの家庭って何だろう

私の家では常に誰かが大声を出していて、たまにお皿なんかも飛んできて、お互いに干渉することもない。それが「ふつう」の家族だと本気で思っていた。
私と親しくしてくれている数少ない友人達もそれなりに家族に問題を抱えていて、頭を悩ませているからより一層そんなものだと思っていた。しかし、次第に私の彼氏の「ふつう」が私の「ふつう」を侵略していった。
彼は会社の寮に住んでいるのだが、週末になると必ず実家に帰る。実家に帰れば家族で晩酌をする。深夜に妹とコンビニへ行ってアイスクリームを買う。家族のグループラインは毎日稼働するし、姉と妹とはSNSで繋がっていて常にいいねを押したり押されたり。
そんな話を私と会うたびに嬉しそうに話す。きっと絵に描いたような幸せな家庭なんだろう。

私には分からないお話なので最初はにこにこ聞いていたのだが、だんだん心のしこりになっていった。仲の良い家族の話を聞くのが苦しくなった。
なんで自分は違うんだろう、などと比較して無条件に落ち込んでしまう。決して帰りたくなるような家ではないし、家族LINEなんてものは存在しない。私の家族が不仲な事はやんわりと伝えているが、ここまでの事とは知らないだろう。知ったら驚くに違いない。だって家族とは仲良く過ごすことが彼にとっての「ふつう」なのだから。うっかり詳しく話して“家族と仲良くね”なんて言われた日には興醒めしてしまう。仲良くしろと言われてもこちらは仲良くする方法も分からない。
育った環境が正反対だと言うことに気づいてしまってから嫌悪感を抱いてしまってどうにもできない。完全に消化不良を起こしてしまった。

家庭は百人百様の国家。歩み寄り2人のグラデーションで家庭を築きたい

相手がどうかは分からないが、私は結婚を視野に入れてお付き合いしている。温かい家庭を築きたいと思っているけど、自分に本当にできるだろうか。ハッピーファミリーな義理の家族と仲良くなれるのだろうか。話を聞くだけで嫌悪感を抱かずにはいられないのに、その中に溶け込める自信がない。
子供にとって親から受けた影響と言うものは良くも悪くも大きく、それは大人になってからも簡単に変わるものではないと思う。所詮蛙の子は蛙、自分も親のようになったらどうしようと心配になる。不安になりだしたらキリがない。

今の私は彼の家庭の「ふつう」を越えることはできないし、彼はわたしのような家庭の「ふつう」を知らない方が良い。その方がお互いの為であり幸せだ。
家庭は百人百様、小さな国の集まりみたいなものだと思っている。血が繋がっていたって争いは起きる。他人同士ならきっと尚更だ。だとしたら歩み寄りは不可欠に違いない。
もしかしたら彼は彼で家族に対するしがらみや悩みがあるのかもしれない。それでも私は彼の家族が羨ましいのだ。だから時折彼と彼の家族に嫉妬してしまう。仲の良い家族、と言うワードに対するアレルギーと執着は人並みではない。そんな私は自分の家庭を反面教師にして、彼は幸せな恵まれた家庭を知っているのだからこそ、優しくて温かい家族と言うものを私に教えてほしい。

でも彼の色に100%染まるのはちょっとつまらないから、2人のグラデーションをつくるのが理想だ。そしていつか自分の家族への執着も手離し、彼の「ふつう」すらも軽く飛び越えて、誰よりも幸せな家庭を築くことを永遠に夢見る。