思えば、今まで結婚したいとか、誰かと付き合いたいな、と願ったことがなかった。
二十歳になってからその思いはますます明確化し、もう自分の中で“結婚”“お付き合い”という選択肢は消えていた。

別にこの時代、独身や結婚願望0の人間なんてあまり珍しくもないだろう。
けれど私の場合、時代がどうとかではなく、もう根本から“普通”ではないと思う。
恋愛などに関しての“固定概念”を“超えてしまった”と表現した方が正しいかもしれない。

恋愛も結婚も、私にとって大切じゃない。美しいものさえあればいい

まず、私は美しいものを愛している。
何よりも。

世間の声や、孤独な生活、孤独死さえも私にとって脅威にならないくらいに。
これらに目もくれない程、美しいものを愛している。
それくらい、美しいものが私の人生を支配している。美しいものは私の中に長年蔓延っていた恋愛・結婚の『常識論』を壊してくれた。とりあえず私は、古今東西のあらゆる音楽、絵画、様々な楽器の音色、美人(老若男女問わず)、センスのいい建築物、商品のパッケージ、食、衣類、宝石、色鮮やかな異人の瞳、ダンス、歌、星空、本、映画、花、好きなキャラクター…などとこれらの美しいものを愛で、五感で味わうのに忙しいし、お付合いや結婚すれば愛でる時間が激減するのは目に見えているからだ。

このように美しいものが何より大事というのが大きな理由であるが、恋愛の裏面や色恋沙汰を見て聞いて読んだりをしていく内に、恋愛はますます敬遠するものになったというのもある。ともあれ、結局は“美しいもの”というのが一番の理由だ。
次に束縛嫌いと一人が楽だなということ。

周りの目なんて気にしなくていい。私は生きたいように生きるだけ

「誰かと付き合わないの？」
「結婚しなかったら一人で死んでいくんだよ？悲しくない？」
「いい人紹介するよ？」

専門学校にいた頃、よくこんな質問がされた。
笑顔で「ふふっ、ありがとう。でも今のままがいいの」と当たり障りのない返答をしていたが、内心「余計なお世話じゃ、ボケェ」と毒づいていた。仮に今、そんな質問されたら、「ふふっ、けっこうです」と柳のように受け流し、頭の中は憧れの国、海や空の青さ、
お気に入りのコーデ、ピアノやヴァイオリンの優しい音色、といったことばかりを考えているだろう。

ちなみに私は行きたいところ、食べたいものには一人も二人もないと思っているので、前に一人で焼き肉を食べに行ったことを家族に話したら「よく一人で行けるね」と驚かれた。
いや、驚いたのはこっちだ。食べたいものを食べに行くのに一人でだったら、何の問題があるのだろう。テーマパークや旅行も同じだ。当人でもないのに、どうしてそんな一人でいることに“寂しいやつ”と簡単にレッテルを貼るのだろう。

なので、あれを食べたい、遊びたい、行きたい、でも自分ひとりだけでは……と思っている方々。どうかその欲望に忠実であってほしい。『ぼっち飯』という単語や人の目とか気にせず、一人でも食べたいものを食べ、楽しんでほしい。タピオカ飲んでみたいなぁ、なんて迷っている男性諸君の方々も。(それでも恥ずかしくて行けないという方は無理してそうすることはない。)

加えて、同性同士でのお付き合いや結婚の何が珍しいのだろうと思う。
昔だろうが現代だろうが。『人が人を愛してる』だけなのに。
ただ、それだけのシンプルな事実なのに。

さらに言わせてもらうと、童貞だとか処女だとか、非常にどうでもいいものの極地だと思っている。特にそれらをネタにしてからかう奴の神経なんぞ疑う。

そんなことより、自分の好きなものや“推し”のことを考えていればいい。
もし言われたら「じゃあセックスってそんなに素晴らしいものなの？偉いことなの？具体的に述べてください」と言い返してやればいい。

私は「普通」を捨てた。「普通」以上に、大切なものがあるから

話が脱線してしまったので、戻すことにする。

結婚、幸せな家庭、出産…、俗に言う“女の課題”。
女性に生まれたからにはこうやって人生を送るのが“普通”。

これら以上に大切なものがある。
故、お付き合いも結婚もしないで生きていくと決めた私は“普通”を“課題”を捨てた。

こういう経験・考えも踏まえ「あ、私はいわゆる“普通”ではないんだ」とすんなり自覚した。でも、悲しくもなんともなかった。

私のこの考えは大衆の理解を得ることは難しいだろう。まぁ、当たり前のことだ。
でも、そんな世間の声はどうだっていい。ただそれが身近な存在――大好きな友人、家族に『お前の考えは可笑しい。そろそろ結婚しろ、子供を産め。孤独に生きて、一人で死んでいくなんて、惨めにも程がある』と言われたらどうなんだろうと、たまに自問自答する。
答えは“あっそ”。それだけである。そんな妄想をしては、自分にとってやっぱりそれくらい美しいものが大切なんだとしみじみ実感する。

色々と欠点だらけで弱い私だが、誰かや何かに縛られ、美しいものを愛でる時間を減らされること、その代表格であろう“交際”と“結婚”だけは受け入れることはしない。
誰になんと言われようと、これが不器用でへっぽこな私の唯一の誇れる“信念”だ。
どれだけ歳を重ねても、私の中は常に美しいものについて考えているに違いない。

「普通」を盾にして人を傷つけず、お互いに認め合って生きていこう

別にお付き合いや結婚が悪だと言いたいわけじゃない。
本人が心の底からそれを望んでいるのなら、私は良いと素直に思う。
ただ、“恋愛”＝“絶対するべき”という考えを他者に押し付ける(逆の考えも然り)のは間違っていると思うし、しないで欲しい。

そして、私は誰にも縛られたくないし、縛りたくもない。ひたすら美しいものを愛でて死にたい。念のために言っておくが、自分勝手に好きに生きたいと言っているわけじゃない。
人様に不快な思いをさせないようにマナーや優しさを持ちつつ、その中でも年齢や性別に囚われることなく、一人の“人間”として生きていきたい。ただそれだけのこと。

願わくば、皆が他者、世間、メディアの『普通は～』という呪文に踊らされることなく、
お互いに思いやりを持ちながら、「個」を認め合い、それぞれ充実した人生を送って欲しい。そうすれば、より自由で寛容な社会が生まれ、皆が生きやすい世界が出来ると私は確信している。

と、やけに孤独に関してだけは超然としている私は、こんなことをのんきに毎日思っています。