私の友達にアイドルヲタクがいる。彼女は地下アイドルから韓流まで、幅広い知識を持っている有識者だ。私が「ねぇ、私の好きそうな曲教えてよ」と不意にLINEを送ると、彼女はその日中に「これどう?」とピンポイントで私に刺さる曲を教えてくれる(東京女子流などは脳天を貫かれた)。Juice=Juiceというハロー!プロジェクトのアイドルグループについても、彼女と会話が盛り上がった。

私が初めて聞いたJuice=Juiceの曲は、2020年リリースの『好きって言ってよ』。この曲の中で彼女達は「無償の愛は品切れ」だと歌っている。私はそのフレーズの美しさに感銘を受けたのだが、更にジュースの沼にハマって過去の楽曲を辿っていくと、より一層胸が締め付けられた。

それは『イジワルしないで抱きしめてよ』という楽曲を聞いたときの事。彼女達は2013年にリリースされたこの曲の中で、「無償の愛で抱きしめる」と歌っていたのだった。

……この2曲の間に流れた7年という時間の中で、Juice=Juiceの「無償の愛」は品切れてしまったということになる。更にはメンバーも入れ替わっている……。女の子達の中に何があったの……?いや、何かあったのは社会の方なのか???……エモエモの、エモ(語彙力喪失)。

「かがみよかがみ」で知った大好きな曲を書いた山崎あおいさんのこと

私はJuice=Juiceの楽曲を聞いて、「なんじゃこのかっこいいアイドルは……さすがつんく♂さんだな???」と思っていた。実際プロデュースしているつんく♂さんはすごいし、『イジワルしないで抱き締めてよ』は、つんく♂さんの作詞作曲である。

しかし『好きって言ってよ』に関しては、作詞作曲共に、山崎あおいさんという方の楽曲だったと、つい先日知った。そう、こちらの「かがみよかがみ」で。峯岸みなみさんのラジオに、ゲストとして山崎あおいさんが登場した回をまとめた記事が配信されていたのである。私はその記事を読んで、椅子からずり落ちた。

なぜなら私は、あまりにも『好きって言ってよ』が好きすぎて、そして聞きすぎて、自身が「かがみよかがみ」で書いた文章の中にも

『私は少女ではないし独身でもない、アラサーの主婦だ。想いを伝えたい相手に順番に手渡せるような恋心はとうに品切れ。というか、そんなストックを未だに胸の内に抱えていては、夫婦間の「愛」すらぶっ壊れてしまう』

という、オマージュ?的な言い回しを勝手にしていたのである。……え???もう、なんなの……???輪をかけてエモい。しかも山崎あおいさん、年下……?う、嘘でしょ???

「裏」に当たるスポットライト その泥臭い努力に心が動かされる

昨今、人の価値観や生き方に影響を与えるほどの情報が、一般的に華やかだとされる「表」のお仕事をされている方からだけでなく、「裏」の方からも受け取れるようになった。その情報というのも、薄っぺらいHow toではない。その「裏」の方が、人生において大切にしている信念についてであったり、迷っている誰かを救えるような血の通ったエピソードであったり。

最近のラジオやSNS、書籍や雑誌なども、ノンフィクションやドキュメンタリーの色が濃くなってきている気がする。というか、私が個人的にそういう情報を好んでキャッチしているのだと思う。

例えばスタイリストさんの作った実用的なファッション本や、メイクさん主催のイベント。写真集などを編集をされる方のアカウントが何万人ものフォロワーを抱えていて、人生相談を受け付けていたりもする。

この令和にはもはや、「表」も「裏」もない。輝く人や物を作り上げるのは、泥臭く生きる「人」なのだ。一般人ですら努力すれば何万人にもフォローされ、人の人生を変える力を持てる。

私が求めているのは、ただ華やかなビジュアルの人間像や、耳触りが良いだけの音楽ではない。知りたいのはそれを作り上げるための泥臭い努力や、誰もがぶち当たる壁を乗り越えてきた体験談。私と同じ物を求めている人も、きっと少なくないはず。

みんながそれぞれのジャンルでヲタク化してきている?

ちなみにアニメヲタクの世界では、令和になるかなり前の段階から、「今回は作画監督が~」とかいわゆる裏方に言及することが割りとスタンダードであった。私はアニメだけでなくドラマでも、劇中音楽が耳について離れないタイプのヲタクなので、必ずエンドロールはガン見する(ドラマ「カルテット」の劇中音楽担当のfox capture planなんかもう堪らない)。

多くの人が番組のエンドロールや本の奥付けに書かれる裏方さん達の名前を言及する様になったというのは、人々が様々なジャンルのヲタク化しているということなのかもしれない。

表と裏、そんなジャッジはもはや不要 私は好きな人から情報を得たい

実際ファッションやメイクなど、料理やカメラなど、様々なジャンルにおいて、プロフェッショナルとアマチュアの溝は年々浅くなってきているように思う。それぞれが憧れる対象については、もはやプロやアマ、「表」や「裏」というジャッジは不必要。理想とする人間像から欲しい情報を得たい。ただ、それだけ。

そう思うと、この現代における「有名人」や「インフルエンサー」という言葉も、受け取り方が変わってくる。とはいえ情報の発信には得意不得意があるので、もちろんその人の発する情報の質がフォロワー数にそのまま反映されているとは言えない。

しかし少なくとも、今言えるのは、「裏」で何かを作り上げている人間が、大勢の人生や価値観に影響を与える事は可能だし、その上憧れの対象にもなり得るということだ。……う~ん、シビれる!良い時代だね!

とにかく私は、山崎あおいさんを、今後推します!!