特集:「ふつう」を超えてゆけ

私はアセクシャル。私にはフツーの人が恋する様が奇行にしか見えない

「ふつう」を超えてゆけ

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 私はアセクシャルだ。
 だからというわけではないが、私には、フツーの人が恋する様が奇行にしか見えない。
 子供の頃から私にとって恋愛は脳内物質による錯覚でしかなかった。恋愛ドラマは滑稽なものだった。「僕は死にましぇーん!」で永遠に笑っていられた。恋愛をする人は全員奇行に走る。その様が面白いからみんな恋愛ドラマとか恋愛リアリティ番組とか恋愛マンガとか読んでる。そう思っていた。
 学生時代、同級生たちが色気づいてきた頃もそうだった。誰と誰が付き合うって。と言われてもふーん。男子と話して女子に嫉妬されても、気持ちがわからない。なんだあいつ? そんな具合だ。

「恋愛って変」みんなも私と同じ考え、だと思っていた。だけど

 どうもそうではないらしい。ということに気づいたのは高2の夏の教室。友人は出来たばかりの彼氏とメール。私はインターネットでレスバトル。彼氏の友達でも紹介しようか? と友人が言う。私が断ると、彼女はなんで? と聞く。いやー恋愛って脳内物質がひき起こすなんちゃらの錯覚なんでしょ? などという私の話を聞いて、
「恋愛できないとか可愛そうだね」
と真面目な顔で友人は言った。
 恋愛できないのは可愛そうなこと? 私は可愛そうな人間なのか? なんだか、いろいろな物事が崩壊しそうになって、ついでに友情も崩壊しそうになって、インターネットのコミュニティに書き込んだ。レズビアンの匿名希望さんからありがたい言葉を頂戴する。
「恋愛できないとか、かわいそう」

「尊い」とされる恋愛は私の中にはない。セックスだってただの行為

 それから幾年も経過した。一度だって他人を好きになることはなかった。恋愛もしなかった。どうやら自分がアセクシャルと呼ばれる性的マイノリティで他人に恋愛感情を抱かない人間であることは、最近ようやく受け入れた。が、それはそれで息苦しいということにも気づいた。
 世の中って恋愛する人ばかりだ。ヘテロの人もゲイの人もレズビアンの人もバイの人も、みんな恋愛をするらしい。なんか恋愛をすることは素晴らしいことみたい。結婚すること、パートナーでいられること。子供が産まれること、長年夫婦でいられること、とにかく誰かを愛すること。それらは全て尊いとされる。

 世の中には恋愛をモチーフにした娯楽が溢れてる。どんな作品にも恋愛は必要みたいだ。恋愛とか愛情とかそういうものを美しく描く人ほど尊敬されて、素晴しいと讃えられる。

 私はそれらが、良いものだと思えない。これがフツーに面白いもの、フツーなトレンドだと言われても困ってしまう。私にとっては恋愛もセックスもみんなただの行為で、方法で、表現方法の一つでそれ以上でもそれ以下でもない。

セクマイの中でも感じる疎外感 それでも私は自分に向き合い続ける

 ああ、神様は残酷だ。よくぞこんな人類が別々の感情、別々の恋愛観を持っている世界に放り込んでくれたものだ。おかげで私は恋愛をしない大人になってしまい、告白なんてされてしまった暁には罪悪感に苦しむ羽目になった。
 中学の頃、同級生の財布の中にコンドームが入っていたのを見た。
 街で配ってたっていうのは優しい嘘だったんだろう。
 フツーって何だろう。そもそも恋愛のフツーって何。みんな財布にコンドーム入れてるくせに性的指向の違いで喧嘩するなよって思う。ヘテロもレズビアンもゲイもバイも……アセクシュアル以外みんな、恋愛なんて世の中の大半の人間が楽しめるなにかの本質をつかめてるじゃねえか。恋愛を出来ない人間の疎外感を考えたことあるのか? ヘテロとレズビアンに「恋愛できないって可愛そう」とか言われるこのアセクシャルの気持ちを味あわせてやろうか。この財布の中にコンドーム入れてる系のフツー人。喧嘩してないで幸せになりなよ。なってよ。
 だから私は超えていく。好きなことやって生きていく。70、80になって死ぬときにああフツーなんて蹴り飛ばしてよかったなあと思えるように、この先ものんべんだらりっと生きていくんだと思う。でも多分一生考え続ける。これでいいんだろうなと思いながら。大勢の中でわかりあえないってことについて一生考え続けながら、生きていく。そこに恋愛がなくても、それがフツーじゃなくてもいい。

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