「いつか坊主にしたいよね~!」
高校の時、友人とそんな話をしたことをふと思い出した。
切っては染め、切っては染め、を繰り返していた私の髪の毛
季節は春。
だというのに、今年は世界で流行しているコロナのせいでほとんど自宅にこもっていた。
春は一番好きな季節だった。私が生まれたのが5月で、自分の名前が春に咲く花の名前を冠していることも理由だ。
でも、なんか春っていつも変化がほしくなる。こもってばかりの私は、フラストレーションが溜まりに溜まっていた。
さて、実を言うとここ数年の私の髪の毛は安定しない。
去年の秋口までは姉の結婚式のために髪を伸ばしていたが、姉の結婚式が終わり次第すぐにヘアドネーションをするために、伸ばしていた髪を20cmほどざっくり切ってしまった。
もともと、ここ数年はずっとショートヘアでいることが多かったから、ためらいはなかった。
そして、ショートカットにした私は、さらにそのすぐあとに別の美容院で髪の毛を金髪にすることとなった。(ほんとうは、金髪じゃなくってオリーブグレージュの予定だったのだけど、ちょっとした伝達ミスというか、美容師さんにイメージを上手く共有できなかったというか……。)
ともあれ、2回、2時間弱にも及ぶブリーチに耐え、髪の毛は金髪(ややくすんでいる)に変化した。これもまた、ここ数年では金髪にしたり緑髪にしたりとしていたので、ためらいはなかった。むしろ、マイルールとして、ショートカットなら明るい髪の毛!と決めていたから、全く気にならなかった。
そのあとも2回ほど、髪を切っては染め、切っては染め、を繰り返し、春になった。
女子高生だった頃、友達と交わしたことばが頭によぎった
実は春先にちょっとドイツに滞在していたため、滑り込みの帰国をした私は、硬水ですっかり痛めつけられた金髪(渡独直前には暗めのグレージュにしていてもらっていたのだが)になってしまっていた。
しかし、行きつけの美容院は原宿だし(私の住んでいるところは横浜)、近所の美容院だと心もとない。
とりあえず、しばらくは自粛期間なので適当に髪は縛っておけばいいや、と思っていたのだが。
どんどん伸びていく前髪、ふさふさと好き放題に暴れる髪の毛という髪の毛。
耐えきれなかった私の頭によぎったのは、今は昔、きらきらの女子高生だった頃、友達と交わした何気ないことば……そう、坊主だ。
ひらめいてしまったが最後、私は近くの家電量販店に走った。
春だった。
5月の2週目、自分の誕生日が目前に迫った日だった。
27歳を目前にして、坊主になった
私は坊主になった。
意気揚々とバリカンを手に、私は一人お風呂場で新聞紙を敷き、その上にお風呂の椅子をのせ、バリバリバリ。
根本10cmほどが黒く伸びたいじめられ抜いた髪が、床に散らばっていく。
剃っている間はただひたすら無心。瞑想状態に近かったかもしれない。ひたすらに頭の上の芝刈りをしている気分だった。
後頭部と襟足だけは、自分で見ることが難しかったので母にお願いして剃ってもらいたかったが、断られた。
母もまさか、妙齢の娘(御年27歳になる)の頭をバリカンで剃るなんて思いもよらなかったのだろう。私には無理!とバリカンを放り出した。
そんなこんなで、私は27歳を目前にして、坊主になった。
私が坊主になれたのは、春だったから
周りの反応はさまざまだったが、ビフォーアフターの写真を載せたFacebookのいいね!の数は自己最高記録を更新した。
母は3日で慣れたと言った。父はノーコメント。実家をすでに離れている姉は、家に来るたびに私の頭を撫で回した。
幸いにして、頭の形がきれいだったので、自分でもなかなか坊主が似合っていたと思う。
そのあとも、8月までだいたい2週間に一度はバリカンを手にとった。
だけど、私が坊主になれたのは、春だったからだ。
春って、変なことしたくなるから。