私は17歳で癌になった。私はその際、抗がん剤治療をして実際に髪の毛を失うという経験をした。そのような経験の中で私は髪によって勇気をもらったことがあったため、そのときのことについて書いてみたいと思う。
思いついた。行きたかった美容院で最高にかわいくカットしてもらおう
私は17歳の7月末に癌で手術を受けた。手術後の病理診断次第では抗がん剤治療をすると主治医に言われていた。そのため退院してから、病理診断が出るまでの二週間弱の時間は自分の髪がどうなるのかについて、ついつい考え込んでしまうのだった。
そんな時、私は思いついたことがあった。もし髪が抜けてしまうのなら、行ってみたいと思っている美容院にもしばらくいけないかもしれないし、そうなのだとしたら、この髪とお別れする前に最高にいい髪になってみたいし、髪の毛を短くしておけば、抜けても片づけるのが楽だし、もし髪の毛を失わないで済んだとしたらある意味ラッキーな訳だから願掛け的な意味合いもかねて、ずっと行ってみたかった美容院で最高にかわいくカットしてもらえばいいのではないかと。
ということで退院した週のうちに美容院を予約した。ずっと行ってみたかった好きなアイドルや女優さんが通っていた都内の美容院。かなり値が張るが、髪の毛とお別れするにしてもしないにしても、これは意味のある投資だと私は考えた。
いざ予約した日になり、行ってみると店内はキラキラしていてこんな素敵なところで髪を切ってもらえるのか、と緊張とわくわくでとても気分が高揚したことを今でもはっきりと覚えている。
素敵な髪になったことで、自信がついて明るくなるということを知った
その日担当してくれた美容師さんは沢山話しながら、どの様なスタイルにするか、顔の雰囲気、今の流行、好きな化粧や服装などから似合いそうなスタイルを色々提案してくださった。シャンプーやトリートメントをしてくださったアシスタントさん達も沢山話しかけてくださった。そして、何よりも担当してくださる美容師さんもアシスタントさん達も皆さん意識しているのかはわからないが、すごくポジティブになれるような言葉選びをされていて、私は非常に感動させられたのだった。そしてすごく、かわいいといってくださったのを覚えている。もちろんサービスだけでなく、施術の技術も素晴らしく、本当に信じられないくらい髪がつやつやさらさらになって、本当に感動した。そしてお店のスタッフさん達のサービスによって心まで美しく磨かれたようだった。
翌日、美容院で教えて貰った通りに自分でセットすると同じようにかわいくなることが出来た。その日会った友人に髪について褒めて貰えただけでなく今日すごく笑顔で素敵だよと表情まで褒めて貰い、素敵な髪になったことで自分自身に自信がついて明るくなっていたということを知った。そこで改めてその美容師さんの技術に感動させられたのだった。
ショックや恐怖、悲しみよりも、今までありがとう、とお別れできた
その後、病院で実際に抗がん剤治療をすることを主治医に告げられたのだが、頑張ります、とその場で私は素直に言うことが出来た。
実際に抗がん剤治療をすることになって、副作用の脱毛でしばし髪の毛とお別れすることになり、スキンヘッドを経験することになった。
しかしあのように髪を素敵にしていただいたことから、脱毛に対するショックや恐怖、悲しみなどよりも、今までありがとう、という気持ちで髪とお別れすることが出来た。
この出来事で、私は自分に対する自信だけでなく、治療に対する前向きな気持ちまでいただくことが出来た。高いな、と最初は思いながら予約をした私だったが、その価値は料金には変えられないなんとも言えない忘れられない素敵な出来事として今でも大切に心に留めている。