私の得意なことは、「推し」をみつけることだ。
「推し」と言ってもアイドルや二次元キャラに限ったことではない。身近なコミュニティで見つけるのだ。
小学校ではクラスの男の子、中学では部活の一つ上の先輩(女)、高校では隣のクラスの担任の先生(26歳既婚者)、大学ではサークルの明るくてみんなに人気者の二つ上の先輩、カフェバイトの常連客だったサラリーマンぽい人(年齢不詳)、などなどこの少ない文字制限の中にはおさまらないほどたくさんいた。
勘違いしないでほしいのは、恋愛対象とは違うということ。
今まで私は二人と付き合ったことがあるけど、二人とも、「推し」ではなかった。友達として仲良くなって付き合ったパターン。
「推し」とは見ているだけで十分なのだ。崇拝対象なのだ。存在しているだけで尊いのだ。別に付き合いたいわけではない。会えればハッピーで、話せたらもっとハッピーで、仲良くなりすぎると「あれ、思ってたのと何か違う…」という存在だ。

同じ部署の「推し」の可愛い仕草にHPがゼロになる

さて、現在私23歳。東京で一人暮らし。大卒で社会人2年目。メーカーの営業。彼氏いない歴1年。彼氏とは就職で遠恋になって別れてしまった。
今の推しは、同じ部署の先輩、33歳独身。10歳も歳が離れているけれど、童顔だからぱっと見25~26歳にしか見えない。身長165センチ。細身。丸顔。30代にもなるくせに、前髪がちょっと長めで、少し天パでフワフワした髪型。垂れ目で目がくりっとしている。
普通の人から見ればいわゆる「いい奴だが異性として見れない」だけど、可愛い系が好きな私にとってはどタイプだった。その上仕事ができるときたもんだ。喋る頻度は週2~3回、仕事に関することだけ。距離感も抜群である。
たまに喋る時の、子供っぽいくしゃっとした笑顔にくらくらした。

さて、そんな快適な推しライフを少し教えてあげよう。朝、出社して仕事の準備を始めながら、斜め前の席の推しをこっそり観察。今日もふわふわ頭が可愛いな…。推しが目をこする。なんだその仕草はッ!!!可愛すぎかッ!!朝から殺す気かッ!!午前中はお互い事務作業。仕事に集中しながら、疲れたら推しをちらっと見る。疲れた時の甘いもの補給に近い。長い前髪が目にかかっている…。邪魔そうに頭を振る。子犬のような可愛さに私のHPがゼロになる。

推しと二人で営業同行。無言の時間があっても夢見心地

しかしここで死んではいけない。午後は一大イベント、推しと二人で営業同行があるのだ!2週間前からワクワクしていた。声をかけられる。同行前の打ち合わせ。二人で会社を出る。電車に乗る。取引先の企業に向かう…。
話す内容は仕事と世間話くらいで、2時間くらいだったが、夢見ごごちだった。キラキラしていた。眩しかった。笑顔がすてきだった。ふわふわの頭をなでたい…!っと思った。

勘違いさせないために、もう一度言おう。私は推しと付き合いたいわけではない。実際、営業同行中も盛り上がったわけではない。話が続かなくて無言になることもあった。
付き合っても、年の差だったり出身地だったり(私は千葉の都会出身、推しは地方出身)で価値観が合わず、半年も続かないだろう。もし私が推しと同じ33歳だったら、キラキラ輝いては見えないと思う。

それでも私は推しを作る。
朝、眠い目をこすりながら化粧をするために。スーツにアイロンをかけるために。満員電車に乗るために。営業成績が出る会議に出席するために。客先で笑いたくない時に笑うために。社内で下げたくない頭を下げるために。遅刻しそうな時、走れるように。
推しの存在は、社会人生活を頑張るための、ライフハックの一つなのだ。
明日も、推しに会いに、会社に行こう。