クリスマスはいつもと変わらない平日
2020年は、12月24日も25日も仕事だった。
受験生にクリスマスもバレンタインもないように、学習塾の事務員にもクリスマス休暇はないのだ。
コンビニで小さいショートケーキを買ってきて飲食スペースで食べている生徒もいるが、多くの生徒が黙々と机に向かっている。遅くまで自習室に残っている生徒を帰し、自分も帰途につく。12月25日22時。
学習塾勤務の私にはクリスマスは普通の平日。彼氏と合流しラーメン屋へ
12月下旬の空気は冷たく、体の芯まで冷えていく気がする。今年はコロナの影響で、例年と比べて駅前の人通りも少ない。クリスマスを意識していると思われる、緑と赤のイルミネーションが少し寂しそうに見えた。
学習塾の勤務時間は、少し独特だ。高校生の放課後に授業を行うため、昼からの出勤、夜遅くまでの仕事となる。割り切っているとはいえ、毎年この日の帰り道は、心細い気持ちになったものだった。
途中、同じ家に暮らして5年の彼氏と合流した。私が23日に休みをもらえたので、クリスマスらしいこと(といってもケーキを食べたり、プレゼント交換をしたり簡単なこと)はもう済ませた。
なので、世間はクリスマスでも、我々にとってはなんてことのない平日だ。せっかくタイミングよく合流できたし、お腹も空いているしとのことで、自宅近くのラーメン屋に向かう。
5年同じ家に暮らすと、彼氏というよりは兄弟というか、家族に近い距離感になる。ドキドキする展開も滅多にないし、ときめくということもない。けれど、穏やかで安心。
いつものラーメン屋の味は、落ち込んだ時に胃も心も温めてくれる
彼はラーメンの大盛りを、私はつけ麺を食べた。彼はラーメン屋に行くと必ず大盛りにする。どんなにお腹が空いていなくても、反射的に大盛りを頼んでしまうのだという。食べ過ぎて苦しくなって後悔している姿を何度もみたことがあるが、それでも毎度大盛りにする。その度に呆れるというか、アホだなあと思う。子どもか。
やってきたつけ麺はいつも通り美味しかった。ここのつけ麺はスープが豚骨と醤油でどろっとしている。けれど豚骨独特のクセがなく、まろやかで美味しい。
就職と同時に、県を越えて引っ越してきた。仕事はなかなか慣れず、人間関係にも馴染めす、社会人1年目は毎日寂しくて無力感を感じていた。
落ち込んで帰ってきては、彼氏と赴き、このラーメンを食べて胃を満たしていた。胃が温かくなると元気になる気がした。落ち込んで、言葉少なくなる私をそっと連れ出してくれた。
食べ終えて店内を後にする。帰り道に彼が、ふと思いついたように
「コンビニってまだケーキ残ってるのかな」と呟いた。
今朝立ち寄ったセブンイレブンで、デザートコーナーに、ショートケーキがずらっと並んでいるのを見た。不自然なくらい大量に並んでいた。
彼は去年の12月25日の夜に、ケーキが大量に割引されているのを見たという。
帰宅途中の道には、セブンイレブンが3件、ローソンが2件ある。売れ残っていたら買おうか、と次々とコンビニに寄って行った。
クリスマスケーキは見つからず、ロールケーキをつつきながら仕事の話
結果としてケーキは1件も売っていなかった。3件目をまわったタイミングくらいで、お互いもう売ってないでしょ、と思い始めていたが、なんとなく足を進めた。
最後のローソンに入る前に、どこから仕入れた情報かわからないが、彼がローソンはどうやら他のコンビニと比べて割引を始める時間が早いらしいとか言い出した。それならもう売ってないじゃん!と言いながら、ローソンのロールケーキを買った。
お互いに本気でケーキが食べたいと思っていたわけではなかった。(既にラーメンで満腹だったから。)ただケーキを探してまわるのが、暇な大学生みたいで少し面白いなと思っていたくらいだった。ロールケーキは1つを2人でつついて食べた。今日の仕事の話をしながら。
時刻は25日23時30分。もうすぐクリスマスが終わる。
クリスマスにクリスマスらしいことをしない。そんなクリスマスをもう何年も過ごしている。
ドキドキしなくていい。ときめかなくていい。このままくだらないことをして、笑って、そうやって毎日を過ごしていたい。最近はずっとそう思っている。