靴下が大好きな親友がいる。

家には未開封の靴下のダンボールが積まれていて、一回の買い物で20~30足買うのはザラ。
毎日違う靴下を履いていて、お散歩のときはお花柄、美術館に行くときは絵画柄、いつも足元を華やかに彩っている。

一方、私はいつから履いているのかわからないくたくたのものや、お土産で買った靴下、もらいもの、さらには親指に穴があいた数足の靴下をなんとか一週間ローテーションして履いていたので、「ちゃんとしたの履きな~」とよく笑われていた。

彼女は前職の同期だった。アパートの周りには田んぼと市役所、ドラッグストアくらいしかないような地方の町。私達はいまいち会社にも馴染めず、肩を寄せ合って生きていた。
車のなかった私達は、自転車と、お揃いで買った原付でどこにでもでかけた。毎日会社で顔を合わすのに、お互いの家を行き来しては夜更かしして、たまには長電話をして、いつまででも喋った。彼女との毎日はキラキラしていた。

私の転職が決まり、引っ越しで離れ離れになるときには、「素敵な靴下は絶対にあなたを素敵な場所へ連れて行くよ」と私のために選んだ靴下をプレゼントしてくれた。

ひそひそ話をする女の子の柄。私達っぽい、と選んでくれた。
オレンジの服をきた私と、赤リップで身振り手振りの大きい彼女。
私達はとにかくいろんな話をしてきた。見れば見るほどこれは私達だ。
「足元に二人がいるとか最強じゃん。強い気持ちになれるよ」

靴下をほめられ、思い出すのは彼女のこと

楽しいことも辛いこともわかちあって、毎日のように顔を合わせてきた彼女と離れることはとても寂しかったけど、彼女と過ごした時間があるから今の私がいる。
物理的には離れても、ずっと一緒だと思った。

今日は気合いれていこう!という日や、うれしい予定がある日は、つい彼女にもらった靴下を選ぶ。
新しい土地で出来た友だちに、「いつもかわいい靴下履いてるね」と言われ、彼女を思い出して嬉しくなった。「靴下大好きな親友がいてね、」とこっちに来ても彼女の話ばかりしている。いつか彼女に新しい友だちを紹介するのが楽しみで仕方ない。

ある朝、町を散歩していたら暖かそうなかわいらしい靴下がショーウィンドウに並んでいた。ちょうど冷え込んできた頃だった。思わず足を止めて中に入り、じっくり3足選んだ。
思えば、自分のために靴下を選んだのはだいぶ久しぶりだった。いつもは穴が開いたり破れたりして替えがなくなってきたら、しぶしぶ安いものを買っていた。

久しぶりに彼女に連絡をした。
靴下を見たらあなたを思い出した、ちゃんと冬用の靴下を自分に買ったよ、と伝えたら、
「靴下、ほんとに可愛いの履いて生きてほしい」
と返ってきた。
愛じゃん、と思った。

私達は愛とは何か、という議論をよくした。答えなんて出ない問いだけど、「たとえ離れていても、ずっと幸せで、いい人生を送っていてほしい」という祈る気持ちが愛なんじゃないか。

靴下が大好きな彼女の、かわいい靴下を履いて生きてほしいという願い、こんなの英訳したらI love youだよね。

それを伝えたら「靴下見て私のこと思い出すのも愛じゃん」と返事が来た。

足元を彩ると、強い気持ちになれる。私はもう穴の開いた靴下は履かないし、かわいい靴下だけを履いて、彼女と一緒にご機嫌に生きていこう。