スプーンで粉をマグカップに入れ、少量のお湯で練ってからたっぷりのミルクを入れる。
そしてレンジでチン。
レンジを開けた瞬間からあまり香りがふわっと広がり、思わず座る前に一口味見をしてしまう…
一口で幸せにしてくれる「ココア」は私にとって魔法の飲み物。

私がココアの魔法にかかったのは高校受験の時。
進学校に通っていた私は塾を3つ掛け持ちしていて、帰りが毎日24時を過ぎていた。
翌日朝学習のため学校が早いので、家に着くなり急いで夜ご飯とお風呂を済ませ、学校の課題に取り掛かる。
夜中なので当然のように眠気と、起きている分空腹にも襲われた。

そんな私は何気なく、家のお菓子の棚を見ているとココアを見つけた。
ココアはいつも家にあったので、特に気に止めたこともなく、特別飲もうと思ったこともなかった。
しかしある日私は何となくココアを手に取り、作って口に入れるなり美味しさに衝撃を受けた。

受験のお供に、大学時代のロンドン留学で。ココアはいつも側にあった

その日から私は毎晩夜食として、ココアを飲むようになった。
お湯割り、ミルクたっぷり、マシュマロ入り、チョコレート入り…さまざまなバリエーションのココアを作り、すっかりココアの魅力にハマってしまったのだ。
そしてココアの粉を少量のお湯で練って、生チョコにするという、悪魔の食べものにまで出会ってしまうこととなった。
課題が終わらず徹夜した日も、模試結果が悪く泣いた日も、先生に褒められた日も毎日ココアを飲んだ。
無事第一志望の高校に合格し、晴れて高校生になった私はココアを毎日飲み続けた。

そんな私も大学生になり、大学時代に経験したロンドン留学ではじめて海外のココアと出会った。
ロンドンでカフェに入った私はメニューに「ホットチョコ」という飲み物を見つけた。
「ホットチョコ?」日本では見たことのない名前に「チョコレートが入ってるの?チョコ風味?」疑問だらけだったが、好奇心から注文した。

ブロンドヘアのお姉さんが持ってきてくれたのは、白くて日本では見かけないほど大きなマグカップに入った飲み物と木製スプーン。
熱々の甘い香りの飲み物をスプーンですくって口に運んだ。
それは私が大好きなココアのような飲み物であった。
「海外ではホットチョコ=ココアなのか!」教科書では習わないが、私にとって大切な知識となった。

ココアは一口で多くの気持ちを思い出を蘇らせてくれる

ロンドン留学中いろんなお店に行くと、やはりホットドリンクメニューには「ホットチョコ」があった。
海外の独特な甘みがあるもの、とてつもなく甘いもの、とろみがありスプーンで飲むもの…
色んなホットチョコを飲み歩き、帰国の際には私がホットチョコ好きと知っていた友人が、ホットチョコパウダーの飲み比べをプレゼントしてくれた。

すっかり大人になった私だが、今もココアは大好きだ。
受験の睡魔、涙、喜び、悔しや…
そしてロンドン生活の刺激、経験、驚き、楽しさ…沢山の感情。
ココアは一口で私に多くの気持ちと思い出を蘇らせる。

寒くなりココアがさらに美味しく感じる今の時期。
ついレンジの前に立ち「早く温まらないかな?」と眺めてしまう。
そんな私は今日もゆっくりココアを飲んでいる。