私は相当に家族が好きな方だと思う。相当に好きな方ということに気付いたのは、20代に入った辺りだった。飲み会などで同世代と会話をする中で、親兄弟と距離がある友人が身の回りにこんなにもいるのかと衝撃を受けた。
私は長女で、弟が二人いる。3人の中でも私は地頭がよくなかったが、なぜか小学校の受験に受かったことから、社会人になるまで両親にはかなり投資してもらった。大学も資格を取るためにダブルスクールに通った。
新社会人1日目で妊娠したことを告げると、母は……
そんな私が、新社会人1日目にして妊娠したことが発覚した。私が妊娠した事を母に話すと、少し時間を置いてからこう言ってくれた。
「びっくりしてるけど、今思ってることは2つ。
1つ目は、最高に嬉しい。”のだめ”が千秋様との共演でパリの街中にビラを撒き散らしてたでしょ、あれくらい嬉しい。街中に言いふらしたい!
2つ目は、資格をとるために4年間大学で頑張ってきてたから、今後の仕事がどうなるかいきなりわからなくなったのは、少し困ったね。でも仕事はまた打ち込めるタイミングが巡ってくると思うから、きっと大丈夫。
とにかく嬉しい!おめでとうございます(笑)」
たった一言で、不安で押しつぶされそうだった私を救ってくれた
私はこの母の言葉で、本当に安心した。社会人1年目の4月1日に妊娠発覚なんて、かなり破天荒なことをしてしまって、これからどうなるんだと、当然ながら私は混乱していたのだ。それでも彼氏と話すときは不安な様子を見せたくなくて、至って冷静なフリをしていた。初めての妊娠検査薬、初めての産婦人科と、初めて尽くしで内心ドキドキなのに平静を装っていた。つい昨日まで学生だった小娘が、冷静でいられるはずがないのに。この先どう転んでも職場に迷惑をかけてしまうことは目に見えているし、思っていた新生活とは全く異なる日々が始まろうとしているのだ。
そんな状態の娘に対して、「嬉しい」「おめでとう」とストレートに言ってくれた母。私はそんな母のことがやっぱり大好きだ。
「私だったら」 自分が親の立場になって改めて感じる両親の偉大さ
今私には息子が2人いる。娘はまだいないが、もしもいて、同じことを言われたとしたら、一体どんな言葉をかけてあげられるだろうか。突然のことで動揺して、娘のことを責める口調になってしまう気がする。「なんで」「どうして」と。
でも当時の母は、私が既に自分を責め、混乱していることを察し、「嬉しい」「おめでとう」と言ってくれたんだと思う。妊娠に際して、彼氏やお医者さん、職場の上司と同期と話す中で、私の感覚として妊娠を喜べていなかったことを分かってくれたのだ。私を産んだ母の言葉を聞いてやっと、自分に子どもができたことの喜びを少しずつ味わえるようになった。
お母さん、あの時は本当にありがとう。
ちなみに父は「そうか。まあ相手と会ってみないとわからないから。とりあえず会ってからだな。」と言っていた。そんな冷静な父のことも私は大好きだ。