結婚はもっと劇的で、人生をかけた決断で、毎日をガラリと変えるような、とても大きなものだと思っていた。そんな私が26歳で結婚をして、3ヵ月が過ぎた。
現実の結婚はドラマのような出会いでもプロポーズでもなくて、「信号が青になったから前に進む」のと似た感覚の決断で、毎日の生活に「ガラリ」という音は聞こえなかった。
そんな「思ってたんと違う」結婚生活が始まって3ヵ月。なぜ私が彼との結婚を選んだのか、そして結婚をどう思っているのか、綴ってみたいと思う。

夫は会社の同期で、出会ったときの私は別の人と恋をしていた。その時の私は小説のような恋愛を求めていて、でもそんな相手とはなかなか出会えるものでもないので、誰と付き合っても1年と続かなかった。
でもいつか、白馬の王子様とは言わないけれど、毎日愛を注いでくれて浮気もしない小栗旬似の180cm高収入男性と出会えるはずだとどこかで信じていた。

地獄を共に進む戦友として大切な存在になった彼。でも恋心なんてない

当時の夫は誰にも嫌われないけれど、誰とも積極的に交わろうとしない人で、いつもひとりでランチを食べていたので、同期としての半分上から目線の同情心として、私の方からたびたびランチに誘うようになった。

そのうち偶然にも、同じ案件にアサインされた。その案件は激務として社内でも悪名高く、私たちは毎日電車のない時間に帰り、休日は日本全国に出張してイベントに立ち会うような日々を共にするようになった。
当時の日々は控えめに言っても地獄で、私にとって彼は地獄を共に進む戦友だった。
そんな日々の中で彼の存在は確実に大切にはなっていったけれど、彼は小栗旬というよりもスタンダードプードルに似ているし、恋心なんて影さえも見せていなかった。

某激務案件が落ち着きを見せ始めた頃、そろそろ彼氏でも作ろうかしらと、私はマッチングアプリを通じて何名かの男性とデートをしていた。
その中で私が惹かれたのは本音の読めないミステリアスな雰囲気漂う年上男性で、私は毎日星占いを見ては「今日こそ彼から愛の告白があるかしら」と根拠のない期待で胸を膨らませていた。
そんな毎日を過ごす中である日年上男性氏から誘われ、クリスマスにデートをすることになった。

史上最悪のデートが、私に気付かせてくれたこと

結果から申し上げると、年上男性氏とのデートは史上最悪だった。予想するに、実物の私が思ってたんと違ったらしい。デート中なのにほぼ無言。絞り出して話しかけても「うん」としか返ってこない。張り切っておめかししてきた自分が惨めで、私たちは約1時間で解散した。

クリスマスの夜、20時に解散。帰り道の電車の中は、幸せそうな雰囲気で溢れている。実際はそうでもなかったかもしれないが、“この世で自分が一番不幸モード”に入っている私にはそう見えた。行き場のないこの気持ちを聞いてほしい。
その時頭に浮かんだのが、今の夫だった。

きっと彼なら、まだ会社にいる。きっと話を聞いてくれる。「どうせまだ残業中でしょ、話聞いてよ」やっぱり半分上から目線のメッセージに駆けつけてくれたのは、今思えば彼のやさしさだった。
彼は私の話を聞き、終電がなくなってもお酒に付き合ってくれた。私たちが恋人同士になるのに時間はかからなかった。私に必要だったのは、白馬の王子様でも小栗旬でもなく、スタンダードプードルだった。

結婚しても人生はガラリと変わらない。でも小さな変化を見つけた

それからの私たちはあまりにも凡庸なカップルで、劇的なエピソードはない。だけど私の中に、小さな変化をたくさん起こした。
星占いの結果に一喜一憂しなくなった。彼を抱きしめれば辛いことも少し軽くなった。1年という月日を一瞬に感じた。
いつの間にか小栗旬よりも、彼がタイプになっていた。

「なぜ彼と結婚したの?」と聞かれたら、「信号が青になったから」と答えるくらい、彼からのプロポーズの返事は即答でイエスだった。
「結婚して人生変わった?」と聞かれたら、「ガラリとではないけどね」と答えるくらい、自分の中の小さな変化を見つけるのが楽しい。

だから私は、「結婚、どう?」と聞かれたら、「最高だよ」と答えたい。
まだ結婚を語るには未熟すぎる私だ。これから何が起こるかもわからない。
スタンダードプードルがある日突然ナマケモノやオオカミに化けることもないとは言い切れない。だけど今のこの最高だという気持ちを、私は私に残したいのだ。