#04 法律婚? or 事実婚?名字問題はどうする?

 こんにちは!助産師のシオリーヌです。夫のつくしと始めた夫婦連載も、今回で4回目となりました。
「そんなに毎回書くネタあるかな……」と開始前に心配していたのをよそに、二人のLINEに作られた「ネタ帳ノート」には、まだまだたくさんのエッセイテーマが挙げられております。

それだけ人と一緒に暮らし生きていくということには、考えごとがつきものなんだろうなと感じるとともに、私たちの実践することが誰かの生活に少しでも役に立てばいいなという思いでいます。
読んでくださる皆さんからも「こういう話が聞きたい」というご要望があれば、「#結婚生活A面B面」を入れてツイートするなどして、教えていただけたら嬉しいです。

さて今回は私たちが結婚するにあたって話し合った「法律婚or事実婚?名字問題はどうする?」というテーマについて、お話をしようと思います。

結婚して改姓し、離婚して戻す。知らせてもいい人を選べない

私たち夫婦は法律婚をしていて、夫が改姓をしてくれました。戸籍の筆頭者と世帯主は私です。
(こう伝えると人から「じゃあつくしさんは婿養子に入ったんだね」という言葉をかけられることがありますが、夫は私の親と養子縁組をしたわけではないので「婿養子」ではありません)

二人で結婚すると決めた後、結婚の形について話し合いをしました。
法律婚か事実婚か。
私は一度目の結婚の際に自分が改姓をしていて、その大変さというのを十分すぎるほどに実感していました。当時は「結婚=法律婚で、名字を変えるのは女性!それ常識!」という価値観の中にいたので、疑問を抱くことも、そもそも結婚にあたってそうしたことを話し合う必要があると思うこともなくその選択をしましたが、想像以上に苦労の多いものでした。

銀行や免許証、クレジットカードなどの各種手続きが煩雑なのはもちろんのこと、私が一番嫌だったのは「別にバラしたくもない人にまでプライベートな情報を明かさざるを得ない」ということ。
私は個人で仕事をしているので、取引先と口座情報等のやりとりをすることも多いのですが、いくら仕事自体は旧姓で行っていたとしても、そうした個人情報のやりとりの中で名字から「結婚している」という情報が伝わってしまう(自分がそれを伝えたい相手かどうかを選ぶ余地もなく)。
そして離婚をした後にはまた名字を戻したので、一度取引をした相手には「口座の名義が変わりました」と訂正をして回る必要が生じ、そこで「離婚しました」という情報まで知らせなくてはならないというのがとても負担でした。

「結婚しているのを隠す必要があるのか?」という疑問を抱かれる方もいるかもしれませんが、私が抵抗を感じていたのはその事実を知られることではなく、プライベートに踏み込んだそうした情報を知られる相手を「自分で選ぶことができない」という状況に対してです。

シオリーヌさん、つくしさん
一度は撮ってみたいと思っていた和装でのウェディングフォト

結婚の形を決めるときに優先したのは「子育てのしやすさ」

自分は生まれ持った名字に特別愛着があるというわけではなかったので、改姓にさほど抵抗はないとそれまでは思っていたけれど、名字が変わることでこんなにも生活に負担を感じなくてはならないのだと知ったのは自分にとって大きな発見で、それ以降もしもう一度結婚をするとしても、もう名字は変えたくないと強く思うようになりました。

そうした思いをつくしに話し、もしつくしも改姓に抵抗がある場合は事実婚を選択することを考えたい。つくしが改姓に抵抗がなく法律婚を希望するという場合は、法律婚を選択することも良いと思う、ということを伝えました。

法律婚か事実婚かということを考える時に、優先したのは「子育てのしやすさ」について。
どちらの結婚の形でももちろん親子関係に変わりはないし、両親の名字が異なっていようと家族の絆なんかになんの支障もきたさないだろうというのは、前提としてお互いに思っていたことでした。

ただ日本の子育ての制度を調べると、そのほとんどすべてが「異性カップルが法律婚をして子を持つ」ということを前提として考えられていて、既存の制度を不自由なく活用するにはそのレールに乗ってしまった方が確実に“ラク”だと感じざるを得なかった。

また、事実婚の場合には、夫と子の間に法律的な親子関係を認めさせるために「認知」という形を取る必要があります。
つくしの価値観として、認知という形での親子関係は少し寂しさを感じるという意見があったこと、そしてつくしは自身が改姓することも構わないと言ってくれたことから、私たちは法律婚を選択することになりました。

いろんな偶然が重なったからこそできた「選択」

夫が私の姓を名乗ると決めたことについて、「つくしさんの家族は反対しなかったですか?」と質問を受けることもありますが、義母に報告した時には「今はそういう時代でもないもんね」とすんなり受け入れてくれました。
うちの義母、めちゃくちゃいい人なんです。本当に(いつか義実家話も書きます)。

こうして改めて書いてみると、私たちが「日本の法律でスタンダードとされているレールに乗るという“ラク”な選択」をできたのって、本当にいろんな偶然が重なったからできたことだと感じます。

・私とつくしが異性カップルじゃなかったら?
・つくしが改姓をしたくないと思っていたら?
・つくしの家族に妻側の姓になることを反対されたら?

一つでも状況が異なっていたら、今の形の結婚を選択することはできませんでした。

そう思うと今「スタンダード」とされている結婚の形が、あまりにも限定的な属性の人たちに向けて作られているものであるということを、ひしひしと感じます。

だからこそ同性カップルにも結婚という選択肢を平等に用意されるように、改姓したくないカップルにも夫婦別姓での結婚という選択肢を平等に用意されるように。
「私たちは結婚できたからそれでOK」ではなく、どんな背景を持つ人にも婚姻の平等が保障される社会のために声をあげていかなくてはならないと思っています。

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“性の話をもっと気軽にオープンに"をテーマに、 性にまつわる様々な情報を発信する助産師の性教育YouTuberシオリーヌ。 身体の仕組み、感情や欲求との向き合い方、大切な人との付き合い方、自立について… 学校でも、社会に出ても誰からも教わることができない「性」にまつわるあらゆる問いに、 真剣に向き合い、具体的な知識を伝えるための一冊です。