自分の顔がとにかく嫌いだ。家族の中で私だけ一重のまぶたに低い鼻、頬骨とぷくぷくのほっぺたにそばかす、太い眉毛、そもそも大きすぎる顔。数えたらきりがない。
ネズミと取り違えたのでは?というレベルの前歯のせいで私の人生は
中でも1番嫌いなのは「前歯」だ。私の前歯はとにかく大きい。前歯の大きさを競う大会があったら出てみたい。多分優勝できる。本当にどうにかしたいがこれに関してはメイクとか努力とか自分の力ではどうにもならないのだ。母が若い頃、穴ぼこにはまって転倒した時に前歯が欠けて歯医者で前歯を削ったそうだ。前歯が小さくなってよかったと話していてすごく羨ましかった。私も転ぶしかないのかもしれないなと思っている。からかわれることもあったが、誰かが面白がってくれて笑ってくれるならどうぞネタに使ってくださいという感じで...だけどそれでもどこか傷ついている自分もいた。写真を撮る時には必ず口を閉じてしまうし、笑う時も手で口元を隠してしまう。
子供の頃はちっちゃくてかわいい前歯だったのに、どうしてこんな立派でビッグな前歯が生えてきてしまったのか神様に聞いてみたい。ネズミの前歯と取り違えたのでは?というレベル。この前歯のせいで人生の大部分は不幸だ。私は介護士をしているが入職したての頃、認知症のお爺さんに「あんたのその前歯は親になんとかしてもらうべきだ」と言われかなりショックだった。元々マスクは必需品であったが、現在コロナ禍でマスクをつけるのが当たり前になり、少し気が楽だ。
ああ言えばこう言う、いわゆる面倒くさい女。自覚はあるけど治せない
それから私はとにかく性格がひねくれている。(と言われる)
誰かの何気ない言葉ひとつで考えが360°変わってしまったり、理屈っぽかったり、ああ言えばこう言ういわゆる面倒くさい女なのである。自覚はあるけど治せない。
中学生の時、あまり話したことのない違うクラスの男の子に告白されて勢いでお付き合いしたことがある。付き合って何日か後に「俺はぷむこちゃんの優しいところが好きだ」と言われ「え???????それ私の何を分かって言ってるの???私全然優しくないからやめな???」と言ってしまい1週間で別れた。
誰に何を言われてもひねくれ者は素直に喜べないのだ。すごく損をしていると思う。「ありがとう」と素直に言えればいいのに、なんだか大嫌いな自分を認めてしまっているみたいで嫌だし、恥ずかしかったのだ。
私のコンプレックスまで愛してくれる人がいたことが本当に嬉しくて
あれから何年も経って、私は魔法のような言葉をかけられた。その言葉をくれたのが現在お付き合いをしている人だ。何気なく、本当に何気なく「私の好きなところは?」と尋ねた。すると彼は即「歯を出して笑うところ」と答えた。私は一瞬固まったけれど、その一言で今まで感じたことのない気持ちが込み上げた。今まで彼に「かわいい」と言われても「そんなことない」としか言えなくて、すると彼は「ぷむこはそんなことないと思ってても、俺はそんなことあると思ってる」と言ってくれた。私が私を認められないのを分かっていてくれているようで嬉しかった。私のコンプレックスまで愛してくれる人がいたことが本当に嬉しかった。彼に好いてもらえるなら前歯はこのままでいいやと思えた。初めての気持ちだった。この世にたった1人だけでも私のコンプレックスを愛してくれる人がいることに気がついて私はすごく幸せ者だと思えるようになった。ありがとうコンプレックス。ありがとう前歯。大嫌いな私の前歯が、私にとっても大きな愛をくれたのでした。