生物学的性別は女。性自認も女。自認はもう間違いなく女。
男っぽい自覚はあるし、似合うからと男の子っぽい服装が多かった時期もあった。よく男と間違えられたし、酔った勢いでたまに飛び出す一人称は俺。
女性と付き合ったこともあるし、男性に告白されたことより女性に告白されたことの方が多いんじゃないかと思ったこともあったけど、私の理想とする自分の性別は一度も変わらなかった。でも、もしかしたら私は男の子なんじゃないか。そう思うことは度々あった。

女？男？　性自認が揺らぐ私に「どっちでもいい」と言い切った母

男の子なのかもしれないし、男だったら楽だったのかもしれない。どっちつかずの宙ぶらりんの気分は何度も味わった。
それでも私は自分を女だと思いたかった。

そんな私を変えたのは母の言葉だった。
私より男らしくも見える母は性自認がゆらいだことがないように見えた。私、本当に女の子なのかな？と呟いた時母はこう言った。
「性別なんてどっちでもいい。気にしないの」
それから母は続けた。
「性別なんてたまたまに過ぎない。どっちに生まれてもそれなりに生きていたはず」
「大事なのはその人がどんな人かだと言うこと。性別はどっちだって関係ない」

脳も性器も性格も、「生物学的」な差だけじゃなくて「個人」差もある

衝撃だった。
これまでずっと悩んできたことを、こうもあっさり簡単に片付けられてしまうとは。
でも、母の男らしい面とたまに現れる女らしい面を見るたびに、気持ちが楽になっていった。母ほど男らしい人が女なら、私も女なんだろう。そんなふうに思った。
周りを見てもそうだ。
女の子らしい友人の、たまに見える力強さ。
頼もしい男性が時折見せる繊細さ。
誰しも少しくらいは持っているものなのだ。

たしかに男性と女性では脳の作りにも違いがあるとは聞いているが、人間の脳なんて当然個人差もあるものだろう。
私は性器も少し変わっているのだが、特に機能面でも問題はないらしい。
性器が異なるから私は女性じゃないだとか、男性の要素が入っているんじゃないかとか、あるかもしれないけどだからなんだどうした以外今思うところはない。
最初は驚き、他の女の子との性格的な違いは気のせいではなかったのかと納得したが、これは体の小さな個性で済む話。それ以上の話にはしたくない。
それに男の要素が入っていたとして、何か困ることでもあるのだろうか。問題でもあるのだろうか。
まぁ驚かれることはあったけど、そんなんで引くような奴はこちらから願い下げだ。
きっと母は私の体のことを知っていた。これは生まれつきだからだ。病院で話も聞いていたのだろう。だからこんなこともポンと答えられたんじゃないか。そう思った。

男でも女でもない私　生まれ持った性も愛した性も、たまたま

今では特別自分を女だとも思っていないが、男だとも思っていない。
ただ、たまたま生まれた性別が女で、生涯を共にしようと誓った相手は男で、これで特に不満もなく生きているからいいのだと思っている。
たまたま体の性別と同じ性別の人を愛したっていいだろう。同性愛者は同性ならなんでもいいとでも思っているのなら、それは大きな間違いだ。

女性と付き合っていた時、どちらかに男性の役割を当てるならそれは明らかに私だったがそれでも性自認は変わらなかった。
これからもきっと私の性自認が変わることはない。ズボンの日もスカートの日も私は私だ。
胸を張って生きていこう。