25歳。社会人一年目。結婚という足音が近くまで聞こえてきた。

私は世間でいうところのリケジョだ。大学の研究室という場所でも浮かれた内容が話題にあがることもあるが、それは学生の恋愛どまり。今までの人生、結婚という言葉はどこかまだ遠くにあった。学生としてのものの見方だけでしか周りを見ていなかった。

そんな学生気分を引きずった私は2020年春、社会人の仲間入りをした。

同期や友人からの「結婚するんだ」に、面食らった。「これが大人か」

これから私も働くぞ!と人並みの覚悟と、社会人としてやっていけるのかなという不安を抱きつつ受講した新入社員研修。休憩時間中に話していた同期の中に、「この新入社員研修が終わったら結婚するんだ」と言った人がいた。しかもそんな人はこの人一人だけではなかった。

驚いた。今までの人生を学校の勉強、大学の研究、アルバイト、自分の趣味、友人と遊ぶ…とひたすら自分中心軸で生きてきた。なのに自分と同期であり、自分と同い年のこの人はもうそんなことを考えているのかと面食らった。
しかも同時期に女子高時代に仲の良かった友人から結婚するんだという連絡がきた。自分が大学院生としてやってきた2年間、彼女は社会人として、人生を共にする人との未来を考えていた。やっぱり面食らった。それと同時にどこか人間として彼女に置いて行かれたような気がした。

自分中心ではもういられない世界が社会人。今だけではなく、これからを考える必要があるのが社会人。頭では分かっていたけど驚いた。
これが大人か。そう思った。

そんな私の結婚願望は人並みにあると思う。でも今現在私に恋人がいたとしても、今が結婚をする時ではない。

その理由のひとつに今の勤務地が大きく関係している。

社内の出会いは多いと思っていた。すくなくとも配属先の街でなら…と

私が初めて配属された場所は田舎の街。自分が生まれ育った地方都市よりもはるかに田舎で、自分が大好きな外国の食品を扱うチェーン店もなければ、学生時代お世話になっていた低価格帯のファッションブランドのお店も、大好きな人が多いあのおしゃれな海外コーヒーチェーンのお店ももちろんない。

この配属先、実は全くもって気に入っていない。
配属希望を聞くための面談での私の希望は残念ながら叶わなかった。
街の嫌なところがたくさん目につくためか、この街に来てから数か月、この街に住み続けたいと思うことは一度だってなかった。転勤してでも転職してでも30歳ごろまでにはこの街を抜け出したい。そう思う日々が現在続いている。

生活区域が自分の人生の満足度を決めることに大きく影響をしていたのだなということを、身に染みて学んだ。

勿論、職場で私と似た立場の人でも結婚している人はいる。そういう人は学生時代からの恋人とゴールインしてパートナーをこの街に連れてきたパターンと、近郊の街で恋人を探して結婚を機にこの街に引っ越してもらったパターンが多い。この会社は所属する大多数が男性の会社。そしてこれらの話ももちろん男性の話。
正直、まったく参考にならない。

唯一知る女性社員の例としては近郊の都市で出会って、現在別居婚中。
もちろんこの方法もお互いを尊重する良い結婚形態だと思う。でも私は大切なひととご飯を一緒に食べる将来を描きたい。

「男性ばかりの職場なら社内での出会いは多いでしょ」
私が現在就職した会社から内定を頂いたことを報告すると、周囲から何度もこんな声をかけられた。私も当初はそうかもしれないと思っていた。すくなくとも配属先の街で新しい出会いがあるかも…とそう思っていた。

結婚を具体的に考える前に、まず自分をなんとかしなきゃ

でも現実はそう上手くはいかないようだ。
だってよく考えてみてほしい。会社は男性ばかりといっても既婚者や年齢がずっと上のベテランのおじさま方ばかり。
年齢が近い男性ももちろんいるが、すでに心に決めた人がいる人がほとんど。
田舎なので出会いそのものがまず少ない。

そしてどうやら私は同僚を恋愛対象とは思えないタイプであったらしく、恋人がいない人がいたとしても、彼を同僚以外の目で見ることはできない。
そしてそもそも結婚後もこの街で生きていく覚悟はとうてい今の私にはできないと思う。これからも、きっと。

こんな私は、結婚するには、ましては満足のいく生活を送るにはこの街を出るしかない。そう思った。

田舎でも結婚できるよと人は言う。私も努力すれば結婚はできるとは思う。
でもその後の生活は、都会の結婚生活とは違うことが多いと私は思う。

結婚し、子どもを持ってからもずっと働いていたい。
そして仕事も子育ても私生活も大切に過ごし、人生を楽しみたい。

これが私の結婚への願いである。

結婚を具体的に考える前に、まずは自分をなんとかしなきゃ。
そのために今は仕事と勉強を頑張っていこう。
もちろん出会うべき人にいざ出会う時のために、自分磨きも忘れずにしないと。

周りの結婚の話を小耳にはさみつつ、今日も私は希望する将来に向かってあがいている。