先日の誕生日、プロポーズを受けた。突然で、正直驚いた。
サプライズで用意してくれた素敵なホテル。
都会の夜景を見下ろす位置にある部屋からは、東京タワーが小さく見えた。

流行にうとく大人しい彼 ティファニーブルーの箱を差し出して

プロポーズをしてくれた彼とは、二年ほど前に出会い一年数ヶ月お付き合いをしている。
彼はどちらかというと大人しい、いわゆるいい子にカテゴライズされる人だと思う。流行りのSNS映えや動画投稿サイトにはうとく、世間の声にはあまり流されない。
流行り物やサプライズが大好きなわたしは、とても嬉しい。その反面、彼が用意してくれたなんてイメージが結びつかないだけにそこでまずは一つ目の衝撃。

いつもは少し地味なチェックのシャツに寝ぐせのついた猫っけのやわらかい髪の毛でにこにこしている彼なのに、今日はシンプルな大人っぽいシャツにワックスで整えたヘア。なんだちゃんとやろうと思えば、しっかりとした格好も出来るのねとここで二つ目の衝撃。(後頭部だけ少し寝ぐせがついているがそこは気にしないでおこう。)

普段と少し違う雰囲気をまとってティファニーブルーの箱を差し出してきた。
はい、ここで三つ目の衝撃。
「箱にはね、意味が込められていて……」
説明する彼を見て、いろいろなものがこみ上げてきた。

イケメンと付き合うステータス 他人の評価を気にしていた 

学生時代はいわゆるイケメンが好きだった。毎日のように変わる恋模様を友達と楽しく語り合い、他人の事情にズカズカ土足で踏み込み意見を交わし合う。
「〇〇ちゃん振られたらしいよ」
「〇〇ちゃん彼氏と喧嘩してたよね」
学校という狭いムラで繰り広げられる情報交換の中で、無意識に他人の評価を気にしていた。だからイケメンと付き合っている自分というステータスを感じていたのかもしれない。
まあ、大人になったらきちんと恋愛できればいいか。そんな軽い気持ちで。

現在25歳になり、学生の頃から見れば「大人」と呼ばれる年になった。実際大人になってこんなもんか。

自分軸で生きようとするものの、やっぱり流行りものが好き。
写真を撮るときはいつも「映えるか」を気にするし、「エモい」文章に心打たれる。
三日坊主になる事がわかっているのにダイエットサプリを購入するし、背伸びしてデパコスを買って開封しないままなんてこともある。

年齢という数字だけが加算されていき、中身はまだまだ学生時代と変わらない部分も多い。

それこそ失恋して一時は、今後好きな人に出会えなかったらどうしようと不安になったこともあったし、20代前半に第一次結婚ブームが起こったときは焦った。30代でバリバリ働く先輩を見たときは将来結婚はしなくていいやと思うこともあった。

失敗や経験を経て自分の価値観がだんだん定まってきたなと感じる。
お互いに一緒にいて落ち着くか、自分らしくいれるか。
この基準で考えたら、本当にプロポーズしてくれた彼は最高のパートナーだ。 

価値観の違うふたり だんだん運命の相手になっていく

人の根本の性格は変わらないけれど、価値観はどんどん変化していく。

学生時代に今の彼と出会っていても、お互いに意識しない関係だったかもしれない。
失敗や経験を経てあるそのお互いの価値観に共感しているからこそ、今一緒にいる。

将来は笑顔の絶えない家庭で子どもは二人くらい欲しい、母になっても熱量持って仕事したいし、旅行も沢山行きたいし、年をとっても手をつないでデートしたい。
そんな夢を彼と一緒なら叶えられる気がする。

いや、待てよ。
性格や好みが違うわたしたち。

特別な日には綺麗な夜景が見えるところに行きたいと思っていた。彼がこうしてサプライズをしてくれたのは、わたしの価値観を理解してくれて、日々過ごす中で、彼の価値観も少しずつ変化しているだ……(わたしも彼が好きなアニメを一緒に見るようになったし、彼が好きな和食作りの勉強始めたもんな~)。

運命の王子様は白馬に乗ってくることはないけれど、一緒にいるうちにだんだん運命の相手になっていく。
影響を与え合って、今の関係が出来上がっている、そしてこれからもそう。最初から完璧な夫婦なんていないんだ。

そんなことを考えて沈黙になった20秒間。気がついたらすーっと涙が溢れていた。
「よろしくお願いします」
と笑顔で返事した。
東京タワーってこんなに輝いていたんだ……。
彼の婚約者となった20秒後は、夜景がより鮮やか見えた。

後日、なぜサプライズで突然プロポーズしてくれたのか聞いてみたら、
「だってこういうの好きでしょ?」
って、さすが。
これから、どの夢から一緒に叶えていこうか。