「私、今の彼と結婚することにした」
「えー!おめでとう!」

笑顔でおめでとうをすぐに言えた私、えらいぞ。
待って、えらいぞだなんて私、本気で祝ってるよね?あれ?
そう思う私の心は、ちょっとした焦燥感と言葉にならない灰色の感情に包まれる。

運命の相手を同じように探していた友人の結婚報告に、焦燥感

ついこの間まで、毎月のように会っては近況報告をしあい、飲みに歩いていた私と友人。
なかなか上手くいかず、不遇でありながらも懸命に運命のお相手を探す私たちの恋愛話はいつもくだらなくて、楽しかった。
好きな人に好きになってもらえないと嘆く友人を本気で励ましていたし、幸せになってほしいなと思っていた。はず。

しかしその友人に彼氏が出来、同棲を始めてからは一変。連絡が来る頻度は減り、飲みに行くことも無くなった。
幸せからか穏やかな表情を携えるようになっていた友人に、自虐的でコミカルな自分の恋愛話を聞かせるほど私の心も強くない(笑)。
そうして自然と合わなくなり、会わなくなった。
そんな友人からの報告だった。

シンプルにうらやましい。せめて、私は私を愛したい

人生はタイミング。結婚もまた然り。
早いことが良いことでもなく、結婚しないという選択肢もある。誰かと競っているわけでもなく、比べるものでもない。そして友人の幸せは心から喜べる人間であるべきだ。
そんなことは分かっている。分かっているのだ。
それなのになんだこの感情は!

しかし私は、この灰色の感情がある自分を責めるつもりも、否定するつもりも全くない。
令和の時代、結婚をしない選択肢も尊重されるようになってきているし、そのような生き方もアリだと思う。
だが私は結婚したいし、この人と一生を共にしたいと思える人を見つけたい!
結婚はゴールではなく、スタートだなどと人は言うが、スタート地点にも立たずにいつまでもウォーミングアップばかりしていたくはないのだ。
つまるところ、シンプルに羨ましい!

あいにく現時点で私を愛してくれる人はまだ見つかっていないので、せめて自分だけは、自分自身のことをとことん愛すことにする。
そうすることで、灰色の感情がどす黒く変色することを防げるような気がするし、その方が自分の精神衛生上も良い。
そして同じようにこの灰色の感情を抱く全ての人を愛したい。みんな、気持ちわかるよ、めっちゃわかるよ、と。
きっと自分を愛することが出来る人が誰かを愛することも出来るのだろう。
自分自身の愛し方は非常に簡単。
太陽の光を浴びて深呼吸をしたり、カフェで読書をしたり、お風呂あがりにボディークリームを体の隅々まで塗ったり、ストレッチをしたり。
今しかできない一人の時間を存分に、有意義に楽しむ。
そのままこの時間が永遠に欲しいと思うようになったならそれはそれで良いんだし。
誰かが結婚するたびにむくむくと出てくる灰色の感情を抱きしめながら、半ば反射的におめでとうを繰り出す。そんな自分でもいいじゃないか。