結婚後はどちらかが専業主婦(夫)に

「女の子の幸せはそれだけじゃないから」

ある日の歓談中、先輩からそう言われた。
私は配属されてほんの数ヶ月で、仕事をやめたほうがいいと遠回しに言われたのだった。
同期の中では良い成績も収め、先輩にもよく指導してもらい、叱られながらもかわいがってもらっていた。

彼氏についても先輩から、扱いが雑すぎる。友達かなんかだと思っていないか。
とやんわり言われた。その時はその言葉はそれほど気にならなかった。
先輩は特に男尊女卑の考えを持っているわけではないし、そうは聞こえなかったからだ。

それから彼氏と結婚後のことについて話し合った。
私たちはともに不器用だから、仕事も家庭もなんて器用にできるタイプじゃない。
その代わり、一つのことに集中すればそれなりに力は発揮できるし、多少お金がなくてもやりくりするのは得意だから分業にして、どちらかが専業主婦(夫)になろうという話になった。
彼の仕事の熱量には敵わないからすんなりと仕事を譲った。私の仕事では稼ぎも安定しない。家族を養う自信もなかった。

それでも挑戦したい仕事はあり、家事を分担し、仕事を続けさせてもらえないかと打診したが彼は首を横に振るばかり。彼はだんだんうつむくことが多くなった。
それでも諦められずにいたら、「そんな気持ちで仕事をしても意味がない。やめておけよ」「俺がいなかったら(精神的に)生きていけないくせに」
そう言われるようになった。
私だってわかっている。ここまでやれること全部をやってきたからこそ、今の自分にできることとできないことの区別くらい付いていた。
それなのにいつまでも納得できない自分がもどかしかった。

彼をとるか、仕事をとるか

ある日彼氏が仕事のことで問題を抱えた。
今のままではサポートできない。
自分の仕事をしながら解決の手助けができるようなやわな問題ではない。
それも試みたが、やはり不器用な私には無理があった。
そういう事情から、彼か仕事のどちらかを取れと言われた。
そもそもが妥協しながら選んだ仕事である。
当然彼をとるべきことはわかっていたのに、なかなか思いきれなかった。
やきもきした先輩たちから背中を押される形で会社を出た。本当に感謝している。

自分のことしか考えていなかったなと反省した。
彼のため、家族のためと考えたらもっと早くに決断ができたはずなのに。
私は仕事ができない。女だとか何だとかなんてことは関係ないとわかっていた。
それでもいやだとか、我慢できないとか言って反発した。
しかしそんなことを言っていたら私は彼の隣にいる資格はないと思った。

周りの友達は皆働いているし、働くことが当たり前くらいの考えだ。
こんな話はとてもできない。
今時こんなことを言う彼氏もどうだと言われそうだ。
働くことで夫を支えるという支え方もあるし、なんなら逆だっていいんだからこのことについての考え方は千差万別だろう。
逆もいいなら、女性がやめたっていいはず。その風当たりがいやに強いのも解せない。

結婚の形も、生き方も、人それぞれ

残念ながら、コロナで結婚は延期。
私の両親は残念がりつつも、この子のことは任せてと彼を仕事に専念させた。
これには私の不甲斐なさも関係している。
コロナも落ち着いている時期にならなんとか会いに行けたが、私が乗り気でないのにわざわざ行っても意味がないと思ったらしい。
本当にそこは反省している。
私はいつまでも子どもなのだ。情けないことに。
結婚においてはあまりよろしくないことだ。

結婚がすべてではないからそれもまたよいのかもしれないが、好きな人と一緒に居られる生活の素晴らしさを知ったら、やはり私は結婚したい。
そのためにはコロナがおさまるまでにもう少し大人になっていないと。

結婚前から仕事を捨て夢を捨て自由を捨て、アルバイトで細々生きる私をバカにする人も嘲る人もいるだろう。
それもまた良しだ。
まぁ、これから新たなビジネスも考えているのだけれど。それをするしないも個人の自由だ。
結婚の形もするしないも、生き方も、人それぞれなのだから。