「ママの若いころはね、女はクリスマスケーキに例えられてたの。」
あれは2年前のクリスマスシーズン、家族で食事をしていた時のことだ。
学生時代は勉強しろ、公務員になれだのと一人娘のわたしに自分の願望を、あなたの将来のためだとか言ってよく口出ししてくる人だった。
そんな母が、ついに恋愛まで首を突っ込んでくるようになった。
今まで彼氏のかの字も見せてこなかったのだから無理もない。逆によく今まで触れてこなかったなと思うが、その分、事があるたびにツンツンしてくるので、能面のような顔で対応している次第である。
そんな不愛想なむくれた顔してたら結婚できんぞ~とたたみかけてくる。四千頭身の四人目かなと思う。
母の悪態「25歳は売れ残り」 SNSのご報告メール見てよく分かる
母は祖父母の望む職に就き、祖父と仕事上関係があった父と24歳でお見合いをし、ガチガチに親の敷いたレールの上を走ってきた人だ。
そんな母に25歳になったら売れ残りだよと悪態をつかれたわけだが、まあそのころには結婚したいと思える人と巡り会っているだろう、とか思っていた。しかし今のところそんな楽観的に人生を歩めていない。恋愛経験の乏しいわたしにも最近やっと彼氏ができたわけであるが、おちゃらけた恋愛ごっこをただしているだけである。
結婚、どう思う?なんてタイトル数年前には鼻で笑ってたが、にっちもさっちもいかなそうで怖い。友人たちの恋愛事情もこのご時世よくつかめていないが、みんな逞しくどんどん走っているのはうすうす感じる。
夜にひとりでゴロゴロしながらSNSを見ていると、【ご報告】と銘打った投稿が流れてくる。自分もかねてより~とか私事ですが~とかの枕詞を多用し幸せアピールしたいものである。今なら売れないお笑い芸人の気持ちが良くわかる。
令和の一大事 ぐーたらしていら、親友に彼氏ができてるやないかい
令和になって一番ショックだったのは、「親友、知らんうちに彼氏できてるやないかい」事件である。
大学時代に出会った彼女とは酸いも甘いも経験し、なんならお互いを恋人のように扱い過ごしていたのにも関わらず、だ。正直あんな美人に彼氏いないのなら焦る必要ないか~と思ってぐーたらしてたらこのざまである。しかも彼氏は友人の紹介で他府県在住であるという。
親友がわたしの知らないところで知らない男を選んでいるのは悲しかったが、自分も全く同じ状況なので笑うしかない。
もう他を探すのが面倒だから、と2年付き合ったら結婚の約束を取り交わしている同期がいる。彼女とその彼氏は遠距離であり、結婚をするのであるなら彼女は仕事を辞め、24年過ごしてきた地元も捨ててしまうらしい。
たかだか20代前半にぽっと知り合った男のために安定した職も捨ててしまうのか、それが主流なのかと疑問に思う。しかし、わたしの結婚の理想は2年ぐらい付き合ってんちゃう?くらいに思える人と出会い、電撃結婚(!)することなのでこれも笑うしかない。
運命の人を探して独身街道まっしぐら 祖母の両手が温かい
周りの友人たちは次々と人生設計を確固たるものにしているにもかかわらず、未だにわたしは独身街道まっしぐらだ。
まだ運命の人を探していたい年頃であるが、最近は祖母も母のように諭してくる始末である。しかも両手を握って。老人の手はそれはそれは温かい。冷たくなる前にどうにかしたい。
締めになるが、この文章を何年後かに見つけ23歳のわたし頑張れ~と夫と笑いあっていたい。そして何十年か後、50過ぎになったら、売れ残りそうな娘に悪態をつきたいものである。
夢見がちはいいけど、夢で終わらせないようにねとどこからか母の声が聞こえる。