婚約をして、幸せの絶頂だった私達。そこに、大きな壁が立ちはだかった。
「どちらの苗字を名乗るか」
親達の強い気持ちが、少なからず私達本人にも影響していった
私の母は、昔から「嫁に行く」という言葉を嫌っていた。さらに、女系家族だからと言って婿養子を望んでいた。
一方で、彼の両親は嫁に来てほしいとの一点張り。こちらは、息子が長男だから、という理由である。
正直私は、嫌気が差していた。嫁だの婿だの、どうだっていい。そういう類のものは時代遅れのような気がしていたし、いちいち親に介入してほしくなかった。
しかし、親達の強い気持ちが、少なからず私達本人にも影響していったのである。
最初のうちはお互いに「どっちの苗字でもいいよ」と言っていた私達だが、親の気持ちを考えると、自分の苗字を変えたくなくなってきた。何度も話し合いを重ねたが、その都度喧嘩をしてしまう。どちらかが折れなければいけない状況が続いた。
夫婦別姓の制度があればいいのに。何度そう思ったことか。私達は、いつしかこの話題を避けるようになっていった。
レディーファーストで優しい彼の考えは、この1年で少しずつ変わった
結論が出せないまま約1年ほど経ち、義両親から「もう自分達で決めなさい」と言われた。
優しい彼は、基本的にレディーファーストな考えである。特にこの1年で少しずつ考えが変わり、「女性ばっかり苗字が変わるって、ちょっとおかしいよね」と言い出した。
そしてついに…。私と、私の両親を思って「俺が苗字を変えるよ」と言ってくれたのだ。この問題が面倒になっていたのもあるかもしれない。
後日、役所に婚姻届を書きに行った。夫と妻、どちらの姓にするか選ぶ項目で、彼は手を止めた。直前まで迷っていたのだ。最後の抵抗だった。
彼は、勢いに任せ、「妻の姓」にチェックを入れた。そのチェックの書き方は、真面目な彼の性格とは裏腹に、乱雑だった。本当は自分の姓を変えたくない。。そんな気持ちが表れていた。
私は一言、「ありがとう」と伝えた。長い戦いが終わったような気がした。
2人で話し合いながら、ずっと一緒に、幸せになる方法を見つけていく
入籍して2年が経った今。
夫とは毎日キスやハグをするほど仲が良く、結婚生活はとても幸せだ。
もし、この先どんなに喧嘩をしても、夫の事が嫌になったとしても、心の奥で「苗字を変えてくれた」ことへの感謝があり、それは一生消えることはないだろう。
これからもお互いに折り合いをつけながら、2人で話し合いながら、幸せになる方法を見つけていくんだ。ずっと一緒に。
結婚って、夫婦って、いいものだなあと思うのである。
私にとって結婚記念日は、夫の優しさを改めて思い出す日になった。